厚生労働省が所管する国立ハンセン病資料館(東村山市)の委託先の変更に伴い2020年3月に稲葉上道たかみちさん、大久保菜央さん2人の学芸員が不当解雇に遭った問題で中央労働委員会(中労委)で調査が進んでいます。不当解雇された2人の学芸員は、国家公務員一般労働組合(国公一般)国立ハンセン病資料館分会(資料館分会)の組合員で、これまで同資料館でのパワーハラスメントやセクシャルハラスメントを告発。改善を求める取り組みに力を尽くしてきた組合員たちでした。
中労委で進む調査
同資料館の運営は2016年から日本財団が受託。2020年度からの委託先は同財団と密接な関係のある笹川保健財団です。これまで委託先変更に伴い職員は継続雇用されてきましたが、笹川保健財団は新たに採用試験を実施。多面評価(職員同士が相手を評価する)として、恣意(しい)的に人格を傷つけるような行為も主導してきました。
これまで資料館分会は不当解雇撤回の取り組みをすすめてきました(表)。東京都労働委員会(都労委)は、①日本財団と笹川保健財団の間に綿密な関係を認める②笹川保健財団の不採用が、日本財団と密接な関係にある笹川保健財団において組合員であることを理由とする不利益な取り扱いに当たる不当労働行為―として救済命令を発出。笹川保健財団は命令が有効であるにもかかわらず一切無視し、2022年5月に中央労働委員会(中労委)に再審査を請求しました。
第3回中労委調査後の報告集会が2日に行われ、笹川保健財団が証人として職員を申請したと報告がありました。弁護団の今泉義竜弁護士はこの職員について、「不当解雇に遭った職員がいかにひどいかを書面で出した人物で誹謗中傷になりかねない。これまで都労委で十分反論済みなので不採用を求めた」と紹介。「笹川保健財団は日本財団委託時の2人の学芸員について知り得ず、新規採用試験で不採用としたと主張しているのに(受託以前の)過去を知る人物の証人申請をするのは矛盾だ」と批判しました。