五輪選手村マンション 大手不動産”ぬれ手に粟” 都有地を9割引売却〈2023年3月26日号〉

 銀座駅から約2.5キロメートルと至近距離にある中央区晴海5丁目のマンション群「晴海フラッグ」(住宅5632戸と商業棟)。三井不動産など11社が都から取得した都有地(13.4ヘクタール)に建設中です。21年東京五輪大会の選手村として使用後に改装、50階建て超高層マンション2棟をつくる計画をめぐる、東京高裁での裁判が大詰めを迎えています。(ジャーナリスト・岡部裕三)

第三回弁論後に東京高裁前でアピールする原告ら=14日、千代田区

住民訴訟で違法性明白に

 19年に先行販売が始まった1期分譲は最高2億3000万円、1億円超の”億ション”が106戸。25年秋に完成予定のタワーマンション最上階は最高3億4000万円台と庶民には高根の花です。

 小池百合子知事は16年、五輪選手村整備の名目で不動産11社(別項)と、東京ドーム2.9個分の広大な都有地を1平方メートルあたり約9万6700円と市価の1割、129億6000万円で売却契約を締結。中央区も、開発業者に課している1戸当たり100万円の負担金を免除(超高層棟は徴収)しています。

 これに対し都民32人が翌年、「都有地9割引は違法」「都政版森友事件だ」として、小池知事と舛添要一元知事らに対し1200億円余の損害賠償を求めて東京地裁に提訴。地裁が21年12月に請求を退けたため、原告は控訴し、東京高裁で係争中です。

 中野幸則原告団長は、都が土地の鑑定評価すら行わず、財産価格審議会や都議会にも諮らずに超安値で都有地を売却した違法行為を批判します。都がパシフィックコンサルタンツに委託した調査報告書で、土地譲渡価格を110億円とし、不動産会社のもうけを最優先する第一種市街地再開発事業方式を提案。これを受け都は日本不動産研究所に土地価格の調査を委託、不動産鑑定評価書も作成せずに11社が加わる事業協力者と密室で協議し、官製談合で売却額を決めたと追及しました。

 原告団と筆者は協議記録の開示を請求しましたが、都は「不存在」(保存期間1年を経過)として開示を拒否。しかも、都は400億円余の埋め立て造成原価すら回収せずに売却。都財務局の元幹部は「財産価格審議会に諮らずに9割引で売却したのは明らかに違法で悪質だ」と批判します。

 都有地投げ売りの背景には、企業との癒着があります。筆者は都有地9割引に関与した不動産会社9社とパシフィックコンサルタンツに、都局長らOB22人が天下りしていた事実を「しんぶん赤旗」(20年3月22日付)で報じました。

 原告団は昨年11月、官製談合に該当するとして改善措置を講じるよう公正取引委員会に申告しました。

 東京高裁は昨年12月の弁論で、原告が提出した田原拓治・桐蔭横浜大学客員教授(不動産鑑定士)の意見書採用を決定。東京地裁の不動産鑑定に長年携わった田原氏は「選手村訴訟の東京地裁判決と日本不動産研究所の鑑定は根本的に間違っている。都有地を食い物にする行為は許されない」と批判します。

 三角比呂裁判長は3月14日の第3回弁論で、原告が求めた田原氏の証人尋問申請を却下。原告側は「審理不十分だ」として証人尋問と弁論継続を申し立てましたが、裁判長は弁論を終結し8月3日に判決を言い渡すとしました。原告代理人の淵脇みどり弁護団長は会見で「弁論終結には異議がある。財政民主主義の根幹を揺るがす大問題だ」と批判しました。

 日本共産党都議団は、選手村を名目にした大手デベロッパーへの破格の優遇措置で都民に大損害を与えると追及。土地売却に反対し、契約後も売却額の抜本見直しを小池知事に要求しています。

◇都有地を取得した11社 

三井不動産レジデンシャル、三井不動産、三菱地所レジデンス、NTT都市開発、新日鉄興和不動産、住友商事、住友不動産、大和ハウス工業、東急不動産、東京建物、野村不動産。

東京民報2023年3月26日号より

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