放送法の「政治的公平」をめぐる安倍政権内のやり取りを記録した行政文書が明らかになりました。首相官邸が執拗に総務省に圧力をかけ、政治的公平を「放送局の番組全体」で判断するという解釈から、「一つの番組」でも判断できると、変更させた経緯が生々しく記されています▼当時の総務相だった高市早苗氏は当初、文書を「ねつ造」と決めつける発言を行いました。総務省が行政文書と認めた後も「正確な記述ではない」と言い張り、事実を確認する責任を野党側に転化しています▼高市氏は、文書が明らかになった際に、「本物なら議員辞職する」とまで述べていました。同じ安倍政権下で起きた、財務省の公文書改ざん問題での、安倍氏の「私や妻が関係していれば総理大臣も国会議員も辞める」との発言を思い出させます▼文書改ざんは、この発言がきっかけになったと指摘されており、改ざんを強いられた職員はその後、自殺に至りました。今回は、当然とはいえ、総務省が文書は省内でつくったものと認めています▼放送法の解釈変更以来、政権に批判的なキャスターの降板が相次ぐなど、メディアの萎縮が進みました。岸田政権の大軍拡路線で「新しい戦前」が指摘される今こそ、解釈変更の撤回は重要な課題です。
東京民報2023年3月26日号より