「それはAIだから。人工知能というのは、つまり政策決定者である私が決めたということ」▼小池都知事が2017年8月の記者会見で、築地市場の移転の意思決定過程を示す文書が、情報公開で不存在とされた理由を聞かれた際の言葉です▼AI=人工知能の“活用”について、そんな「先行事例」もある都庁が、8月から本格的にAIの利用を始めるといいます。都議会質問への答弁で知事が明らかにしたもので、行政の文書を読み手に合わせて要約する業務や、Q&Aの作成などに利用するといいます▼行政でのAIの利用は、全国の自治体でも模索が進んでいます。業務が効率化して、相談対応のような人間ならではの仕事に人手を割けるようになるのではと活用を考える自治体もあれば、AIが生み出す偽情報をどう見極めるかや、さまざまな行政情報の流出の危険性から、慎重な姿勢を示す自治体もあります▼冒頭の知事の発言は、「改革の一丁目一番地は情報公開」と公約しながら、行政の透明性をさらに後退させた小池都政を象徴する言葉です。どんな最新技術を活用するにしても、根本になるのは行政の姿勢。「密室で決定したことに都民は従えば良い」—そんなやり方が論外であることは、言うまでもありません。
東京民報2023年6月25日号より