イコモスが遺産アラート 外苑再開発の撤回求める〈2023年9月17日号〉

 ユネスコ(国連教育科学文化機関)の諮問機関で文化遺産の保護に取り組む国際的な専門家らでつくる国際NGOのイコモス(国際記念物遺産会議、本部・パリ)は7日、明治神宮外苑(港、新宿区)の再開発事業を直ちに撤回し、都市計画決定を見直すことなどを事業者に求める「ヘリテージ・アラート」を発出しました。

 同事業は三井不動産、明治神宮、伊藤忠商事、日本スポーツ振興センターが事業者で、樹齢100年の歴史ある多数の樹木を伐採・移植し、超高層ビルなどを建設。神宮球場と秩父宮ラグビー場の土地を交換し、解体・新築する工事は、すでに始まっており、これに伴う樹木伐採許可を新宿区が出しています。再開発事業は都が認可したもので、多くの専門家、著名人、国内外の市民から大きな批判を招いています。

公園史に「類例ない遺産」

神宮外苑のイチョウ並木

 イコモスが公表した文書によると、アラートは神宮外苑が市民の寄付と労働奉仕によって創り出された世界の都市公園史でも類例のない文化遺産だと評価。事業者は速やかに再開発事業の撤回を行い、社会的責任を果たすよう要請。都は計画の環境影響評価には根本的な欠陥があり、再審議すべきだと指摘。関連する都市計画決定の見直しを求めました。

 アラートはまた、東京だけの問題とせず、日本政府が介入すべきだとし、港、新宿、渋谷の各区には神宮外苑の名勝指定への努力を求めました。アラートは、事業者と岸田文雄首相と各関係大臣、小池百合子都知事、各区長らに送られました。 

小池知事は要請に責任逃れ

 小池百合子知事は8日の定例記者会見で、イコモスがヘリテージ・アラートを発出したことへの対応を問われたのに対し、「正確な情報の発信を事業者に発出してほしいと伝えている」とのべ、神宮外苑の再開発事業を認可した自らの責任については触れませんでした。

 イコモスがアセスメント(環境影響評価)の再審査を求めていることについては「条例・答申に従って適切に手続きを進めている」と、都の対応を正当化しました。

 小池知事は7月の会見で再開発計画への批判を「ネガティブキャンペーン、プロパガンダ(政治的意図をもつ宣伝)もあった」と述べていました。

ヘリテージ・アラート
文化的遺産の保全・継承を促進し、文化的資産が直面している危機に対して、学術的観点から問題を指摘し、未来世代に向けた保全と継承に向けた解決策を促進するために、イコモスの専門家や公的ネットワークの活用を推進するために発する声明。イコモスは過去に「高輪築堤」(港区)や、「出雲大社庁の舎」(島根県)の保存を求めるアラートを発出しています。

 

東京民報2023年9月17日号より

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