参院東京選挙区から、日本共産党参院議員を24年務めた故・上田耕一郎氏は、ロッキード事件やリクルート事件の追及など、国会論戦の名手としても知られました▼議員を引退後、書き下ろした著書『国会議員』(平凡社)には、国会質疑をつくる際に心掛けていたことや、調査のやり方、法案審議のあるべき姿など、上田氏の「議員哲学」が縦横に語られています▼久しぶりに開くと、そこにこんな言葉がありました。「『重要な問題なので局長に答弁させます』と答えて辞任した大臣もいた。こうした緊張した対話と論戦をつうじて大切な政策が形成されていく。議員の質問戦は、重要な政治的・政策的意義を持つ」▼その国会質疑をめぐる疑惑を問われているのが、自民党を離党した秋本真利衆院議員です。洋上風力発電をめぐり、風力発電会社から多額の資金提供を受け、同社が有利になるよう国会質問した疑いです。同じく逮捕された同社の前社長は、質疑への謝礼の趣旨があったと認めていると報じられています▼「対話と論戦をつうじて」政策をつくり上げるどころか、一企業や業界のために国会質疑を賄賂で汚した重大な疑惑。東京地検から家宅捜索を受けるまで、外務政務官に任命していた岸田首相の責任も問われます。
東京民報2023年9月17日号より