ピアニストの榎田まさしさんが10月13日にリサイタルを開きます。プログラムについて寄稿してもらいました。
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ピアノの前に5歳から座って、あれよあれよという間に30年あまりの時が経ちました。この3年間はとりわけパフォーマンスが減少しましたが、レパートリー蓄積の機会と捉え、時間をかけて練り上げる必要のある曲と向き合ってきました。今回のリサイタルでは、それらの曲を含めてプログラムを組みました。
そのうち、3人の作曲家を紹介します。
一人目はシューマンです。彼が作曲した9曲の連作「森の情景」は、数多くのピアニストが演奏や録音を行ってきた作品です。当時、国境のような役割を持っていた森の存在を、ロマン派の詩人たちは神秘な場所として捉えていたようです。詩人たちが描いた森のモティーフをシューマンが音楽として表現した小品集ですが、研ぎ澄まされたシューマンの意志と感性が一音一音にみなぎっています。
次に、シューマンと同年に生まれたショパンの作品から、今回は「バラード第1番」を選びました。それは、先のシューマンが「ショパン作品の中で最も好きだった曲」と語った作品だからです。シューマンの「森の情景」から続けて演奏することで、シューマンの評価が可視(聴)化できるかもしれません。
最後に、今回初めて取り上げる作曲家、アルゼンチンの作曲家・カルロス・グアスタヴィーノ(1912‐2000)です。20世紀の作曲家ですが、調性感覚に添った情感豊かな作品をのこしました。初めて出あった音楽でも懐かしい思いする、ノスタルジックな世界が広がります。
ピアノは、ウィーンのベーゼンドルファーを使用します。会場でお目にかかれますと嬉しいです。
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榎田まさしピアノサイタル=10月13日(金)午後6時30分、杉並公会堂小ホール。全指定席、4500円。申込・問合せ=松野迅後援会 090(7107)6661
東京民報2023年9月24日号より