三鷹市の南西部に位置する自然豊かな国立天文台(NAOJ)周辺地域(大沢地域一帯と野崎4丁目)では、「守り×育み×集う 天文台の森PROJECT」と称する総合的なまちづくりが計画されています。計画に伴う小学校の移転をやめるよう求める住民の会が1日、市長に署名を提出しました。
事の発端は2019年11月、天文台が研究費の財源確保のため、市に敷地の一部の売却を相談したこと。市は敷地を購入、もしくは借地する方針で、「国立天文台周辺地域土地利用基本構想」策定に動き出しました。
プロジェクトの核は、天文台北側ゾーン約4.78ヘクタール内に、羽沢小と大沢台小を移転・統合し、天文台に隣接する第七中を含め、「義務教育学校」の制度を利用した新たな小中一貫教育校を展開する構想。市は、施設全体を「おおさわコモンズ」と位置づけ、多世代が集う交流の場と、地域の防災拠点をつくると説明しています。
市の計画をめぐり、市民団体「大沢の自然と教育を考える会」は1日、羽沢小の現地存続・充実を求める要望書と賛同者1178人分の署名を、河村孝市長に手渡しました。
同会代表で元教員の横森茂樹氏、保護者の立場から宮下迅氏、岩波書店社友の今井康之氏、新日本婦人の会三鷹支部の前山長子氏が、市長と懇談。
宮下氏は、「小学校が近くになければ子育て世代は移住をためらう。土地が売れなくなり、地価も下がる。住民が減れば、税収も減る。健全な市政運営とは思えない」と指摘。市は、羽沢小が野川の浸水予想区域内に立地するため、風水害時の避難所を開設できない問題から高台に移転すると説明していますが、避難所は高台に建つ大沢台小と第七中が指定されており、羽沢小移転の矛盾を突きました。
今井氏は、国の厳しい財政状況により、天文台内部の連携に亀裂が生じている状況を記録した、「国立天文台コミュニティ間意思疎通委員会」がネット上に公開している『我が国の天文学の発展のため』と題した資料を提示。「市長は先頭に立ち、天文台の混乱について共鳴、同調し、議論すべき」と述べました。
前山氏は、地域住民と新婦人の運動が実り、1981年に羽沢小ができたことを語り、「不登校の子どもは、三鷹市でも3倍になっている」と強調。「心を奮い立たせて羽沢小に通っている。それを奪われたらどうなるのか。想像力を働かせてほしい」と訴えました。
横森氏は、「余計な労力が教師にかかりすぎている。小中一貫どころか、小学校6年間の中で一貫教育がされているのか」と疑問を呈し、「住民の避難と学校移転の話は、別問題として考えるべき」と主張しました。
市長はそれぞれの意見を聞き、「いろいろな気持ちを重く受け止めている」と語り、野川の氾濫をめぐる水害の危険性を強調。天文台は民間に売却される可能性もあったと説明し、荒れた緑をもとの姿に戻したいとの思いを述べ、「まさに、皆さんの知恵の出し合いが必要」と語りました。
市長との懇談後、会の参加者から「義務教育学校のプラス面、マイナス面を明らかにしてほしい」「地域の中で賛成派、反対派で分断が起きている」「よいアイデアを出し、提案するのが早道」など、さまざまな意見が飛び交いました。
同席した日本共産党の前田まい三鷹市議は、「統合により学級人数が増える弊害も生まれる。教育論からの検討がされていない。市は、羽沢小を移転し、跡地にスーパーを誘致したいと言う。新しい学校に図書館を複合化する案もあり、国が進める公共施設削減の政策を推進する狙いが透けて見える」と、計画の問題について述べました。
東京民報2024年2月11日号より