1990年に完成した都庁舎は、しばしば「バブルの塔」とも呼ばれます▼バブル景気のなかで建設が計画され、丹下健三氏による独特なデザインに、莫大な建設費を投じてつくられた庁舎。当時、日本一の高さを誇ったことなどから、バブル期の象徴ともなってきました▼その都庁舎を利用した、都によるプロジェクションマッピング事業が賛否両論を巻き起こしています。事業は、都庁の建物をスクリーンにして、東京の街並みや歴史を紹介する映像を毎晩、上映するものです▼都は観光名所とするねらいで、常設の建物では、世界最大のプロジェクションマッピングとして、ギネス世界記録に認定されたといいます。その一方、関連事業の費用は一時18億円と伝えられ、実際は23年度、24年度とも20億円を超えることに、批判の声が広がっています▼日本経済は、日経平均が初の4万円代を記録し大企業の業績が好調にもかかわらず、庶民の暮らしは深刻さを増しています。都庁の足元で、毎週土曜日、支援団体が取り組む食料配布には、700人を超える列ができるときもあります▼暮らしの困難が広がる中で、過去最高水準の都税収入を使って「光をあてる」べきものは何か―重要なのは、都政に臨む都知事の姿勢です。
東京民報2024年3月10日・17日合併号より