東京都が非正規公務員として都内の公立学校に配置されるスクールカウンセラー(SC)250人を3月末で「雇い止め」する問題で、東京公務公共一般労働組合・心理職ユニオンは3月28日、教育現場に大きな不利益を与えるものだとして、都を指導するよう文部科学省と総務省に要請しました。(関連記事)

都は都内の公立学校に配置する「会計年度任用職員」(1年間の有期雇用)として働くSCについて、都が設定する再任用限度4回を超える約1000人のうち250人を3月末で雇い止めにしました。
心理職ユニオンが都SCを対象に行った調査(回答総数728件)では、年齢が高く勤続年数が長いほど雇い止めされている人の割合は高く、勤続21年以上のSCの36%が雇い止めされています。
都は実績評価せず 採用基準は不透明
公共一般の原田仁希書記次長は「採用・不採用基準が不明確で、勤務校から高い評価を受けていたのに実績を評価せず、十分な説明もなく不採用になっている。総務省の通達にも反している」と強調しました。
参加したSCからも「年300回の面接をこなし、常に予約がいっぱいで分刻みで活動してきたのに、不採用の理由は教えてもらえない。20分ほどの面接では実績は評価されず、これまでの職務は無視された。憤りしかない」「『SCは話を聞いて共有する以外に何ができる』など侮辱的な質問がされた。圧迫面接に感じた。不採用の理由も分からず公平性、透明性がない」と訴えました。
総務省から各都道府県に送付された通達「会計年度任用職員制度の適正な運用などについて」(23年12月27日付)では、「前の任期における勤務実績を考慮して選考を行うことは可能である」としています。ところが同ユニオンによると、団体交渉で都は「勤務評定を一切加味せず、面接だけで評価している」としています。
要請では勤務評定で高い評価のSCを排除するような採用基準は、合理的と言えないとし、総務省から都にたいし「勤務評定に基づく採用審査は可能であり、望ましいことを指導してほしい」と要望。また、雇い止めされた人数が250人ちょうどであったことから、予め人数を決めて、そのために「圧迫面接」でふるい落としたのではないかとの疑念が生まれているとし、面接が公正に行われたのか調査し、採用基準を開示し改善するよう都への指導を求めました。
さらに子どもを取り巻く問題の深刻化の中で、経験を積んだSCを大量に現場から排除する都のような雇い止めを防止するために、「任用限度の解消や勤務評定を加味した任用を奨励する通知」を都道府県に出すよう求めました。
文科省の担当者は「不登校など課題が複雑化しており、SCの役割は重要だ。安定的な任用が大事だと考えている」、総務省の担当者は「落とすための面接は適切ではない」と回答。都が面接の審査基準を開示しないとの指摘に総務省の担当者は「地方公務員法には開示できないとする規定はない」と述べました。
日本共産党の宮本徹衆院議員、吉良よし子参院議員、立憲民主党の吉田はるみ衆院議員が同席。宮本議員は「SCの雇用が安定していなければ不幸な思いをするのは、本人はもちろん、子どもや保護者、先生たちだ。学校現場の活動実績を十分に踏まえて選考されたいとする文科省の(スクールカウンセラー等活用事業に関する)Q&Aにも都は反している。文科省として都に徹底しないといけない。圧迫面接の問題は調査してほしい」と述べました。
東京民報2024年4月14日号より