今年1月に起きた日本航空機と海上保安庁機の衝突事故をうけて11日、日本航空被解雇者労働組合(JHU)が中心となり衆院議員会館で緊急院内集会を開きました。JHUは1月11日に同事故についての見解を公表していますが、今集会ではパイロットや管制官などの立場から検証が行われました。
事故は今年1月2日、羽田空港C滑走路上で起きたもの。海保機乗員6人中5人、が死亡し1人が重体、JAL機は乗員乗客379人中15人が負傷しています。現在、国の運輸安全委員会が事故原因などについて調査中としています。
事故概要と事故調査のあり方をJHUの山﨑秀樹・書記長が報告。事故の調査について、「事故または重大インシデント(事故の可能性がある事象)調査の唯一の目的は、将来の事故または重大インシデントの防止である。罪や責任を課するのが調査活動の目的ではない」とする国際民間航空条約「第13付属書」を引用。日本で犯罪捜査の鑑定書として〝事故調査報告書〟を使用することは諸外国では例外だとして、「犯罪調査、刑事責任追及は事故の原因究明の障害になる」と指摘しました。
さらに米国ではデータ上で1日に平均5件の滑走路の誤侵入があるがパイロットの着陸復航などで危険回避できているとして、「JAL機のパイロットの見張り義務がどうであったかが最後のカギになる」と述べました。
航空管制官の現状をめぐり、国土交通労組の佐藤比呂喜・副委員長が、「国家公務員の定員合理化計画の下で管制官の人数が減少している一方で、世界第3位の発着数である羽田空港での仕事は増している。トイレや給水も休憩時間としてカウントされている」と、過酷な勤務実態を告発。
今回の事故をうけて「地上監視レーダーのモニター業務の導入は、既存要員であたるために労働強化だ。夜勤を終えてモニター業務という連続勤務が生じる可能性がある」と語りました。
パイロットの立場から山﨑氏が「ボーイング機から、エアバス機への移行訓練中の副操縦士の着陸であった」として、「操縦教官(左席機長)の負担と(後部席に着座していた)正規副操縦士の役割」に触れるとともに、操縦桿からサイドスティックに変わることや、ヘッドアップディスプレイなどの技術革新の盲点はなかったのかなどについても要検証だと訴えました。
会場ではヘッドアップディスプレイの模擬体験が実施され、視野が狭くなることを参加者も体験。山﨑氏が「ベテランパイロットの存在によって安全文化の伝承が図られる」と強調しました。
宝地戸百合子・JHU副委員長が「事故機にはファーストクラスがあるために1人多い9人の客室乗務員が乗務し、内4人が新人だった。実際はベテラン乗務員が3カ所の非常口を開放した」と報告。「(過去の事故をうけて、安全確保の観点から)客室乗務員において、編成内の新人乗務員の人数制限を労組が訴えてきた」ことを紹介し、「客室乗務員は安全保安要員で、欧米ではライセンス制だ」と述べ、日本では航空従事者ではなく〝接客・飲食給仕従事者〟とされている実態の早期改善を求めました。
集会には主催者として立憲民主党の福田昭夫衆院議員の他、日本共産党からは山添拓参院議員、高橋千鶴子衆院議員が参加。与党からは自民党の山本ともひろ衆院議員が同席してあいさつしました。
東京民報2024年4月21日号より