北区のJR赤羽駅東口周辺(赤羽一丁目)で進められている市街地再開発事業(ことば)をめぐり、学生をはじめとする若者たちが、未来を見据えた斬新で具体性のある赤羽らしい街の姿を、生成AI(画像などを生成する人工知能システム)といった最新技術も活用し、地域住民と一緒に模索しています。都内各地で相次ぐ大規模再開発は、持続可能な社会にふさわしいものなのか。住民の声を聞き、ともに赤羽の街を考える若者たちの活動を通じ、新たな都市開発のあり方が見えてきます。

赤羽のまちづくりに新たな風を吹き込んだのは、昨年、同再開発事業に代わる提案を卒業制作で発表した、慶應義塾大学大学院理工学研究科の杉本涼太さん(22)。杉本さんは、再開発区域の第二地区に含まれる、アーケードが特徴の一番街シルクロードに着目。「Urbanist in Residence(都市を主体的に楽しみながら生活している人の居住地)」をコンセプトに、シャッターが下りた状態にある木造長屋の3店舗を、「ネオ町屋」と名付け、町屋文化を現代的に再生し、高層ビルに頼らないまちづくりの手法を探求しました。
3店舗はそれぞれ耐火や通風、採光、デザインにこだわり、「アーティストが活動できる公共空間を設けた施設」、終電を気にせず、はしご酒が楽しめる「泊まれる居酒屋」、「設計者が街に関わり続けるための活動拠点」として、模型やパース図で詳細に再現。この作品は、学部内で最優秀作品賞に選ばれました。
「設計作品を作っても、結局、紙面上だけで終わってしまう。自分の中で煮え切らない気持ちがあった」と語る杉本さん。多くの市民の意見を聞き、一緒に何か行動したい思いに駆られ、昨年8月、のの山けん北区議(日本共産党)が開催した「赤羽まちづくりミニ集い」に参加しました。
のの山区議は杉本さんの卒業制作を知り、「シルクロードを修復型で再生するアイデアは、赤羽の魅力をそのまま残したい私たち住民の願いにぴったり合い、極めて現実的な提案だと思った」と振り返ります。
AI×建築で
AI(人工知能)にも興味があった杉本さんは、生成AIの「LoRA(画像を読み込ませ、追加学習させる仕組み)」を用い、地域性をもとにしたボトムアップデザインを探求する、建築系学生と若者のプロジェクトチーム「NESS(ネス)」に加入。一方で、のの山区議とも交流を続け、民青同盟北地区委員会の中村睦美さん、長崎夏海さんと、赤羽で市民の主体的なまちづくりを目指す「+Public(プラスパブリック)」を立ち上げました。学生時代に建築を学んだ中村さんは、「一方的なタワマン開発に対し、代わりとなる新しいものを示したい」と話します。
「NESS」と「+Public」の学生・若者の協力により始まったのが、生成AIとボトムアップのまちづくりを掛け合わせた「赤羽LoRA project」。第1回目の「赤羽フォト・ウォークワークショップ」では、住民と赤羽の街を歩き、公園の緑や横丁、銭湯、路地など、参加者が思い思いに街を撮影しました。
第2回目は、住民の手で実際に赤羽の未来を生成AIで描き出すワークショップ「赤羽1000枚プロジェクト」を実施。前回のワークショップで収集した写真を使い、生成AIに追加学習させ、赤羽らしさ、再開発のあり方など、参加者約50人が議論を交えながら、それぞれが望む赤羽の姿を大量に生成。住民はストリートイベント、井戸と酒蔵と銭湯の再生、区民農場など、画像を通して多彩な提案を行い、世代を超えて一体感が生まれました。
