三菱UFGは責任認めて セクハラ二次加害 被害女性が会見〈2024年5月19日号〉
- 2024/5/18
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「誘いを断れない自分が悪いのだと自らを責めていました」と、妻子ある男性上司によるセクハラを受けた当時を振り返り語るのは、三菱東京UFJ信託銀行の連結子会社に勤務していた時に不適切な対応を受け、退職を余儀なくされた30代の被害女性です。三菱東京フィナンシャルグループ(MUFG)内の会社と加害者らを相手取った東京高裁での第1回口頭弁論を前に9日、厚生労働省内で記者会見を行いました。

女性は国内銀行売上高第1位のMUFGの中核を担う同信託銀行の連結子会社、三菱UFJ代行ビジネスで入社2年目の2018年1月から7月上旬頃まで信託銀行から出向中の直属の上司(50代)からしつこく食事に誘われた他、一方的な恋愛感情をあらわにしたメールを執拗に送り付けられる、自宅最寄り駅で待ち伏せされるなどのセクハラ被害を受けました。4月に人事課次長に相談しましたが、問題を軽視され十分な対応はありませんでした。
その後、加害行為がエスカレート。同年7月に恐怖を感じ別の人事部の者に相談した後、会社が加害者に厳重注意をするとしたものの、「加害上司の異動は業務に支障が出る」からと被害女性の異動を示唆。何度も異動への同意を求め、被害女性が体調不良で出勤できなくなると人事部などの上司が自宅近所まで来訪。会社の指示だとして、会社まで連行するなどしたために、病状が悪化し休職せざるを得なくなりました。
責任を被害者にごり押し
人事部上司は同年8月、被害女性に無断で女性の父親に電話で休職などについて報告。さらに「上司の誘いを断れない自分に責任がある」などと追いつめる二次加害や、「(事実無根の)精神的に既往症があった」などの発言を強要するなどし、被害女性を追い詰める不適切なパワハラ行為を繰り返しました。9月にセクハラをした上司は西日本に異動となりました。
労働基準監督署は2019年2月8日、被害女性の労働災害を認定。被害女性は2020年11月に退職し、2021年4月に加害男性上司と人事部上司の行った不法行為、担当取締役の監督責任、会社および信託銀行の使用者責任・安全配慮義務違反などを求めて東京地裁に提訴しました。裁判中、人事部上司は被害者が悪いと堂々と述べるなどハラスメントやその被害者への認識が旧態依然であることが明らかになっています。
東京地裁は2023年12月25日の判決で、加害男性上司と会社の使用者責任を認め、賠償請求を一部容認しましたが、人事部上司の不法行為、取締役の監督責任、会社の安全配慮義務、銀行の使用者責任・安全配慮義務を認めませんでした。被害女性は不服として東京高裁に控訴しています。
会見でMUFG内ではハラスメント相談窓口へのアクセスが非常にわかりにくくなっている現状が語られました。
被害女性は会見で「大企業の中で、弱い立場の女性、新入社員が同じ目に合わないように、誰かが変えないと、考えて訴訟に踏み切りました」と語りました。この問題の労災認定以降、セクハラでの労災認定事案が増えています。
東京民報2024年5月19日号より