人間の限界に迫る業務量が 航空管制官の働き方 業務増えても増員なし〈2024年6月9日・16日合併号〉

 羽田空港での1月2日のJAL機と海上保安機の衝突炎上事故に始まり、5月24日には同空港でJAL機同士の接触事故、5月13日には福岡空港でJAL機が誘導路で停止線を越え滑走路に接近したために、滑走路を走行中のジェイエア機が航空管制官の指示で急ブレーキをかけて離陸を中止しています。ANA機でも2月1日に大阪空港で同社の機体の翼の先端同士が接触。4月24日には函館空港で着陸時にオイルを噴射しながら滑走路上で停止しました。トラブルにつながりかねない事象が相次ぐ中、事故・トラブルを防ぐために重要なキーパーソンである航空管制官の働き方について聞きました。

「航空管制官の労働環境の改善は急務」と話す(左から)佐藤、石井の両氏=千代田区

 多くの航空機の離発着の許可を出し、運行がスムーズに行われるように航路や高度を指示するのが国家公務員である航空管制官です。

 羽田空港は世界で3本の指に入る混雑空港で、2分間隔で離発着が行われます。都心ルートの解禁で羽田空港に飛来する航空機は1.5倍になる一方で「航空管制官の人数は過去20年間2000人ほどで、ほとんど横ばいです。業務量が非常に増加し、過重労働の傾向にある」と告発するのは、管制の現場で多くの経験を積んできた国土交通労働組合の佐藤比呂喜・副委員長です。

 JAL機と海保機の衝突炎上事故を契機に斉藤鉄夫国交相は、「羽田空港において航空管制官における監視強化として、滑走路への誤侵入を防ぐ飛行場面レーダーを常時監視する要員を配置。成田、中部、関西、大阪、福岡、那覇にも順次配置する」と公表。これまでの組合の要求で複数の目でヒューマンエラーを防ぐ監視席が認められつつあるものの、その配分は十分ではなく、羽田空港での現状は同時運用する3本の滑走路を1人で注視するという状況です。

 これについて佐藤氏は「新規の業務が増えたのに新規増員がなく、内部の役割分担の調整で実施されているため、より業務が過重になり疲労管理の面から問題です。また疲労の蓄積はストレスにもなり、集中力を欠く危険性が懸念されます」と指摘します。実際、羽田空港では夜勤から日勤への連続勤務などが生じているといいます。

 同じく航空管制官の石井直人・書記次長は「管制官は国際的な安全基準に基づき疲労管理を行うようシステム化されています。しかし、飲水やトイレなどの生理的な現象での離席時間を休憩時間に換算しないと基準を満たせないほど人員がひっ迫しています。当然、1人当たりの取り扱い機数が増加しています」と深刻な実態を告発します。

 5月13日の参院予算委における日本共産党の山添拓参院議員の質問で「2019年で38人だった欠員が、2024年には91人に拡大している」と明らかになり、過酷な勤務体制の中で離職者の増加や退職者不補充で航空管制官に欠員が生じていることが浮き彫りになりました。

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