「障害者と家族の生活と権利を守る都民連絡会」(障都連)が都議会に提出した「心身障害者福祉手当」の拡充を求める陳情が5月24日の都議会厚生委員会で、全会一致で継続審査になりました。東京都は、「暮らしていけない」という障害者の切実な要望に背を向け、1996年から一円の増額もしていません。都議会でも、不採択が続いてきただけに大きな変化です。背景には障害者らの粘り強い運動がありました。

障都連市橋博会長らに聞く
「革新都政時代の福祉制度を当時の『財政難を招いた』としている自民党の都議が、都に実態を調べるように求めたことに、とても驚きました。制度を守ってきた我々の運動が、いよいよ拡充に一歩近づけた。都知事選で障害者や家族の声を聞き、ボトムアップの知事誕生で実現に道を開きたい」。こう意欲を語るのは、陳情を審査した厚生委員会を傍聴した市橋博・障都連会長(74)です。障害が最も重い身体障害者1級です。
同手当は革新都政時代の1974年に創設された都独自の制度。心身に障害のある20歳以上の人を対象に、月額1万5500円を支給するもの。ただ対象となる障害の程度が限られ(別項)精神障害者は対象になっていません。そのため手帳を持っている7人に1人しか手当の対象になりません。
28年間拡充なし
支給額は1996年以降、28年間1円も上がっていません。陳情は手当の増額とともに、支給対象から除外されている精神障害を含め、障害の程度に関係なく都が交付する障害者手帳の所持者全てに拡大することを求めています。
市橋会長は「日常生活の困難さは障害の程度でははかれない。一人ひとりの状況をしっかり見てほしい」と訴えます。例に挙げたのは、言語障害の程度を決める基準。「どれだけ言葉が通じるかではなく、単に舌の動きだけで3級か2級かが判断される。そういう矛盾がそこら中にある」と指摘します。
障都連の構成団体でもある東京視覚障害者協会(東視協)の小日向光夫副会長(全盲)も「弱視は4級または5級で、手当を受けられない。経済的に困っているのは全盲の人と一緒です」と言います。
厳しい生活実態
小日向さんは今回の署名提出に際し、都議らに障害者の深刻な生活実態を理解してもらおうと訴えました。視覚障害者のある夫婦の場合、収入は障害基礎年金と心身障害者福祉手当の合計で月額約20万円。これに対し支出は家賃や水光熱費、食費で最低でも13万円、その他に日用品や交際費、交通費などがあり毎月ぎりぎりです。
「視覚障害者は物価高でも、広告を見比べたり、買い物で安売り品の購入は難しく、節約はしにくい。介護サービス料も負担です。年金と手当が主な収入の障害者にとって、手当は健康で文化的な生活には不十分です」。
都が昨年度実施した障害者の実態調査でも、年収100万円未満は身体障害者30.9%、知的障害者42.0%、精神障害者に至っては51.4%と半数を超え、厳しい生活実態が浮き彫りになりました。