都立学校の教職員15人が原告となり、卒業式や入学式などで「君が代」の起立斉唱をしなかったことに対する計26件の懲戒処分は違法とし、東京都教育委員会(都教委)を相手に処分の取り消しを求める東京「君が代」裁判・五次訴訟の第14回口頭弁論が4日、東京地裁で開かれました。

起立斉唱の違法性主張
日本学術会議の会員人事で、当時の菅義偉首相に任命拒否された6人のうちの1人、早稲田大学大学院法務研究科教授の岡田正則氏による証人尋問が行われたほか、原告3人への本人尋問を実施。裁判は大詰めを迎え、午前と午後で100人以上が傍聴に訪れました。
都教委が「君が代」の起立斉唱を職務命令として発出した2003年の「10・23通達」から現在まで、不当処分された教職員は延べ484人。原告は、起立斉唱の強制と懲戒処分が、憲法19条(思想・良心の自由)、20条(信教の自由)に違反し、憲法13条(個人の尊重)、23条(学問の自由)、26条(教育を受ける権利)で保障される「教育の自由の侵害」に当たると主張。さらに教育基本法16条(不当な支配の禁止)に反し、都教委による処分発令は裁量権の逸脱濫用などと訴え、一次訴訟から四次訴訟まで、いずれも減給以上の処分取り消しが命じられる「一部勝訴」が続いています。
懲戒権の濫用
証言台で、岡田氏は行政法学の立場から証言。
1966年に国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)主催の教員の地位に関する特別政府間会議で採択された「教員の地位に関する勧告」を取り上げ、教員の身分保障は教育にとって不可欠であり、「教員に対する恣意的な処分は許されない。保護されるべき」と指摘。懲戒権濫用の法理について説明し、「懲戒処分の根拠規定」「客観的に合理的な理由」「懲戒処分の程度や手続きが社会通念上相当」の要件を満たしていないことから、「(都教委による)懲戒権の濫用の事案である」と明言しました。
国際労働機関(ILO)とユネスコが日本政府に対し、「日の丸・君が代」の強制をめぐり是正勧告を出していることについて、岡田氏は「制裁的な懲戒処分が教員の思想・良心の自由を侵害する懸念が示されている」と証言。懲戒処分が行われた教員への再発防止研修は、「思想・良心の自由への重大な抑圧」で「精神的苦痛を与えている。研修自体が違法」だと、証拠を示しつつ発言しました。
岡田氏は減給処分の累積加重や、都教委による処分説明書の違法性なども指摘。最後に「日本が国際社会の中で民主国家だというのであれば、このようなことは止めるべき。恥ずかしい」と、訴えました。
処分は見せしめ
原告3人による本人尋問では、担任を外されたこと、再処分で発生した不利益、同調圧力による精神的負担、都教委は生徒や保護者も監視している事実などを証言。「他の教員に対するみせしめだ」「日本国籍ではない生徒、日本の占領下にあった国にルーツを持つ生徒もいた。その子たちに『君が代』斉唱を強制することはあってはならない」「教育現場は多様性を尊重する場であってほしい」など、苦しい胸の内を語りました。
東京民報2024年7月14日号より