JR昭島駅の北側に広がる緑豊かなゴルフ場跡地に、中国資本の大手物流不動産デベロッパー「日本GLP」(本社・中央区)が大規模な物流センターとデータセンターの開発を計画している問題をめぐり、市民団体「昭島巨大物流センターを考える会」は10日、市に対し、事業者の意向を容認する形で進めている地区計画策定の抜本的な見直しを求め、住民監査請求を行いました。
監査請求人は昭島市民223人のほか、開発地域に生息するすべての生き物を代表して、オオタカとアナグマも名を連ねています(人間代筆)。市が5月に公表した「玉川上水南側地区地区計画(仮称)」の素案は、住民意見の反映がなく、市の上位計画「昭島市都市計画マスタープラン」に大きく矛盾しているため、民意を示す手段として監査請求に踏み切りました。
市民の総意で3年間かけて策定した同マスタープランでは、将来を見越したまちづくりの方針の一つとして「環境と共存する、水と緑が豊かなまち」を重視。同開発地は、「水と緑を守り育てるゾーン」と位置付けられています。
監査請求の理由は、市が地区計画策定の支援を委託した業者、株式会社エイト日本技術開発に支払った、昨年度253万円、今年度214万5000円について言及。マスタープランを無視した地区計画の策定は、都市計画法第18条の2・第4項に反することから違法・無効であると主張しています。
生物多様性の崩壊
同開発事業は、代官山緑地を囲むように、新宿御苑よりも広い約59ヘクタールもの敷地に物流施設3棟(高さ約40~50メートル)、24時間稼働するデータセンター8棟(高さ約35メートル)などを建設する計画。開発地の北部はホタルが生息する玉川上水に隣接し、周囲は静かな住宅街です。
同会は開発地域の樹木4871本のうち、3000本以上が開発により伐採されると算出。1日に最大5800台、往復11600台の車両が、子どもたちの通学路でもある片側一車線の道路を走ることになり、保護者などからも危険性が指摘されています。
会見の前日に同会が開いた学習会では、産業技術総合研究所の研究員による調査報告で、データセンターが建設されることでCO2排出量が昭島市全体の約4倍、電力消費量は同市全体の約6倍に上る可能性が判明。データセンターのみで、年間の電力消費量は高知県全体に匹敵します。
同会の長谷川博之共同代表は、「東京都は2030年までに、温室効果ガス排出量を50%削減(2000年比)すると言っているが、とても無理な状況」と指摘。同会の田所良平弁護士は、緑地面積の大幅な減少、ヒートアイランド現象、日照や風通しの悪化、光などの公害にさらされ、生物多様性の破壊や住環境に大きな影響を及ぼすとして、「命と健康にかかわる重大な問題」と発言。大竹雄二共同代表は、「地区計画をマスタープランに誘導することが市の役割」だと述べました。
東京民報2024年7月21日号より