公職選挙法の前身となる普通選挙法は、1925年に制定されました▼納税額の要件をなくし、25歳以上の男性すべてに選挙権を与えた一方で、戸別訪問の禁止や供託金制度、配布できる文書の制限など、今も続く選挙運動に対する制限が導入されます。普通選挙法が国会で成立する10日前には、悪名高い治安維持法が制定されており、選挙権を拡大するのと引き換えに、言論の自由を制限する当時の政府のねらいがよく表れています▼都知事選での選挙と関係ないポスターの大量掲示や、4月の衆院補選での他陣営の街頭演説への妨害行為の横行を受けて、公職選挙法の改定を求める議論が広がっています。世界では当たり前の戸別訪問を禁止していることや、選挙期間の短縮を繰り返してきたこと、インターネットでは有権者が候補者への支持の呼びかけを自由に発信できるのに、街頭ではさまざまな規制があることなど、時代遅れの公選法による「べからず選挙」こそ、見直すべきでしょう▼知事選の政策論議を歪めた最大の原因は、現職が公開討論の場を避け続け、メディアもそれを放置したことです。選挙戦で政策論争を活発にすることを通じて、都民の都政への認識を深める責任は、メディア自身にも問われています。
東京民報2024年7月21日号より