さらなる空の安全めざし 航空政策セミナーを開催〈2024年8月4日号〉
- 2024/8/3
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航空管制官も加盟する国土交通労働組合は空の安全を高めようと7月20日、第12回航空政策セミナーを開催しました。
セミナーは1月に起きた羽田空港でのJAL機と海上保安庁機との衝突事故に焦点を絞り、航空管制の現場だけでなく航空関係者が幅広く参加。それぞれの視点から安全についての講演がありました。
「羽田事故の情報共有~運行乗務員の視点から~」と題して航空労組連絡会(航空連)の中川明氏が事故の概要をまとめて解説。国内航空会社の現役パイロットである牛草祐二・航空安全推進連絡会議事務局次長が「不適切にもほどがある!?日本の航空行政」と題して講演しました。
牛草氏は日本で滑走路の誤侵入事例が多発したことを受けて、国土交通省交通局が招集した有識者会議が2008年3月に発表した「滑走路誤侵入防止対策検討会議の取りまとめ」と、6月に発表された羽田空港衝突事故の「中間取りまとめ案」が酷似していると告発。振り返りがないことが問題だと語りました。
さらに航空管制官の管制用語や情報提供についても現場の声を聞かずに現場が混乱しているなどの他、パイロットへの教育も海上保安庁や自衛隊の所管が違うパイロットへの言及がないと告発。管制官の人員増加などについては評価しました。
国が導入を推進しようとしている滑走路状態表示灯(RWSL)について、米国、フランス、日本の3カ国だとして、他国が導入しないのは▽価格が高い▽システムが複雑で誤作動を起こしやすい▽(導入後も)滑走路誤侵入が続いている―として、問題を提起。ICAO(国際民間航空機関)標準の滑走路警告灯(RGL)を効果的に使用する方が費用もかからないと述べ、日本の航空行政の構造についても諸外国並みに変える方が望ましいと語りました。
航空管制官で同労組の石井直人・書記次長は国土交通労組からの提言を公表。一部の空港にある国土交通省航空局や空港管理者、航空管制官、就航航空会社、乗員組合などからなる滑走路安全チームを全空港に置き、情報共有と危険とリスク回避などの改善につなげる必要性に言及。設置空港と他国の状況のアンケート結果などを用いて説明しました。
国土交通労働組合の佐藤比呂喜・副委員長はあいさつで、参院本会議で羽田空港事故に関する警告決議が全会一致で上がったことを評価しつつも、「事故の対策が実効性あるものになるよう、人、ハード、制度などの充実は、中期的な取り組みでないと実効性がないため、今後も運動を進める」と締めくくりました。
東京民報2024年8月4日号より