オスプレイ事故 根本原因特定せず ギア装置が「破滅的故障」〈2024年8月25日号〉

 横田基地所属のオスプレイ(機体番号10‐0054)が昨年11月29日に鹿児島県の屋久島沖で墜落した事故をめぐって、米軍の事故調査報告書が8月2日に公表されました。調査報告書は、事故の根本原因を特定しておらず、欠陥機が日本の上空を飛び続ける危険性が浮かび上がります。

 事故調査報告書では、墜落の要因を大きく二つ、あげています。

 一つ目は、エンジンからプロペラに動力を伝えるギアボックスPRGB(プロップローターギアボックス)の「破滅的な故障」です。

 オスプレイは両翼にエンジンを持っており、このうち、左側のPRGBが故障しました。

 PRGBは複雑なギアが組み合わされており、海中から引き揚げられた左側のPRGBでは、これらのギアのうち、5個ある「ハイスピード・ピニオンギア」の一つが完全に破断し、5つに割れていました(写真)。

 割れたハイスピード・ピニオンギアの一部が、PRGBの中心にある「サンギア」と、その他のピニオンギアの間に挟まったと見られます。サンギアは、歯が摩耗して、動力を伝えらえられない状態になっていました。

 この故障がきっかけとなり、オスプレイに次々と不具合が生じました。

 報告書は、油圧の低下や、片方のエンジンが動かなくなった場合に、逆側のエンジンから動力を伝える「ICDS」と呼ばれるシステムの故障、右側のプロペラは動き続けていることによるバランス喪失などが、6秒ほどの間で生じたとしています。このため、機体は制御不能になり、左側に2回転して海面に墜落しました。

警告が次々と発生

 報告書が指摘する二つ目の要因は、パイロットなどの人的なものです。

 事故機は、横田基地から岩国基地(山口県)を経て、嘉手納基地(沖縄県)に向かっていました。

 岩国から離陸して41分後に、PRGB内で、金属片が生じて燃焼したことを示す「チップバーン」がコクピットのモニターに警告されました。

 PRGB内のギアが摩耗して、金属片が生じることによるもので、燃焼すれば、それ自体は、問題ないものだといいます。

 しかし、この日は1回目から10分余りで計3回の「チップバーン」が警告されました(表)。

 米軍の規定では、3回のチップバーンが警告されたら「できるだけ早く(as soon as practical)着陸」するとなっています。同時に、任務の状況によっては、飛行を継続できる裁量をパイロットに認めていました。

 回収されたボイスレコーダーの記録によると、乗組員は3回の警告表示について、ギアボックスの不具合とは別の原因がある可能性などを議論していたといいます。

 その後もチップバーンの警告が続き、6回目には、チップが燃焼しきれなかったことを示す警告が出されました。この警告の場合は、「緊急の(as soon as possible)着陸」が求められます。

 しかし、パイロットはこの時点でも、より近い緊急着陸地点を目指すのではなく、屋久島空港に向かうことを選択。その途中で、墜落しました。

 報告書は、警告を軽視した危機管理の不足を、要因の一つとしています。

破壊の過程も不明

 これらの調査報告書は、事故に至る経過を示したもので、なぜ事故が起きたのか、根本的な原因は示していません。

 ギアの「破滅的な破壊」がなぜ、どういうメカニズムで起きたのか、どうやったら防げるのかも不明のままです。パイロットがなぜ飛行継続の判断をしたのかも、乗員がすべて死亡したこともあり、分かっていません。

 日本共産党の山添拓参院議員は7日、調査報告書公表を受けた聞き取りを、防衛省から行いました。山添氏は「事故原因が不明で対策も具体的ではない」として、さらなる説明の必要性を指摘。防衛省側は「改めて説明できるよう持ち帰る」と述べるにとどまりました。

東京民報2024年8月25日号より

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