
東京都教育委員会が民間事業者に委託して行う「中学校英語スピーキングテスト」(ESAT‐J=イーサットジェー)の来年度の都立高校入試に向けた手続きが進むなか、入試活用の中止を求める「緊急! 夏の市民大集会」が8月19日、都議会会議室(新宿区)で開かれ、オンラインを含めて85人が参加しました。主催は「都立高校入試への英語スピーキングテスト導入の中止を求める会」、同テストに反対する保護者の会など。
同テストは都教委が通信教育大手のベネッセと協定を結び、2022年度から都内全公立中学3年生を対象に実施。テスト結果を都立高校入試の合否判定に活用してきました。これに対し教育研究者や教員、保護者、生徒から、解答する他の生徒の声が聞こえる「音漏れ」や、不受験者にテストの平均点から割り出した仮りの点数を加点する問題など、公正・公平性を巡る多くの問題が指摘され、ベネッセは撤退しました。
今年度から英国の国際交流機関ブリティッシュカウンシルが中学3年生のテストを運営します。中学1・2年生も前年度から対象となり、テストを監督した教員は「音が聞こえた人」と尋ねたら生徒が一斉に手を挙げたと言い、テストの公平・公正性が損なわれる実態は変わっていないことが明らかになっています。
集会では入試改革を考える会代表で武蔵大学教授の大内裕和さんが、反対運動の成果としてベネッセの撤退や他道府県への拡大阻止を強調。不受験者の仮結果推定による加点で通常の受験者との「逆転」が起こっている事実や、音漏れは「解答に影響がない」とする都教委の主張を翻す証言をする当事者を募り、「入試活用中止に追い込もう」と訴えました。
中学3年生の保護者は「不受験者が平均点をもらえると知っている保護者が、子どもを欠席させたいと求めていて対応に苦慮しているという話を先生から直接聞いた。テスト設計の不備なので解決しないと、これを利用してテストに臨む人が出てくる。とても心配です」と話しました。
中止を求める会メンバーで中2のテスト監督の経験もある元教員は、受験で多忙の時期に実質9分間のテストに英語科教員が駆り出され、現場は混乱し、負担が強いられていると告発。「生徒は音が聞こえて声の大きな生徒のまねをすることができたと言っている。これではスピーキングの力はつかない。こんなテストに6年間で210億円も使うのに、現場では英語教員が不足し疲弊している」と訴えました。
超党派の都議会議員連盟のメンバーが発言。立憲民主党やミライ、グリーンな東京に続いて発言した日本共産党の、とや英津子都議は「何を聞いても業者も都教委も必要な情報を答えなくなっている」と批判しました。
東京民報2024年9月1日号より