多数の樹木を伐採し、高層ビルを建設する明治神宮外苑(港区、新宿区)の再開発を巡り、東京都から樹木保全策の見直しを求められていた問題で、事業者代表の三井不動産は9日、伐採本数を124本減らすなどした計画の見直し案を公表しました。これに対し「問われているのは本数ではなく樹木保全の質。貴重な樹木や環境が犠牲になるという再開発の構図は何も変わっていない」など、厳しい批判の声が上がっています。
東京都は2023年9月、樹木保全について見直し案を提出するよう事業者に要請。見直し案はこれを受けてのもので、新ラグビー場など施設の位置などを一部見直し、伐採するとしていた66本を保存し、樹勢が回復した16本を移植。枯れるなどの42本を対象から除き、伐採は計619本に減らしたとしています。
イチョウ並木と新球場との距離が当初8メートルだったのを、約18.3メートルに広げました。しかし、新球場の設計変更など、具体的な方法などは明らかにしていません。植樹は837本から261本増やし、1098本にするとしました。
4列のイチョウ並木の兄弟木でもある港区道の18本のイチョウ並木は、専門家から実現が困難と指摘される移植の検討とされたまま、見直し案では対応が示されていません。
開発で環境犠牲 何も変わらない
都に再開発計画の認可取り消しを求める訴訟(約200人)の原告団長で米国人コンサルタントのロッシェル・カップさんは13日、口頭弁論後の記者会見で「軽微な変更による調整にすぎず、高層ビルと大規模施設の建て替えありきの計画のために貴重な樹木や環境が犠牲になるという再開発の構図は、何も変わっていない」と、見直し案を批判しました。
原告の1人、白田重信さん(台東区)は「再開発問題は樹木伐採だけではない。公共性の高い都市計画公園の維持管理については本来、一部の事業者や利害関係者だけで自由に決めることなどできない。制度の趣旨をねじ曲げて計画を進めるやり方に根本の問題がある」と憤りました。