「ANAの国内・近距離国際線で働く客室乗務員には休憩がありません。過酷な勤務実態は生命や健康に悪影響を及ぼし、十分な保安業務が担えない。乗客の安全や利益に反するものだ」―弁護団が強調しました。ジャパンキャビンクルーユニオン(JCU)は全日本空輸株式会社(ANA)と行った団体交渉が不誠実だとして、東京都労働委員会(都労委)が救済命令を交付したと6日、厚生労働省内で記者会見を行いました。

落ちついて食事も取れず
ANAの国内および近距離海外路線に乗務する客室乗務員は、休憩時間のない長時間勤務(表)を強いられているといいます。国内で1日に4便乗務する際、地上では折り返し便の出発の準備や乗降客の案内などのために休憩をとることが出来ず、「食事時間が8分」だというのが現場の声です。
同社の客室乗務員であった多喜富美江さんはANA労組に相談したものの解決に向けて取り組まれないことから、個人で加盟できるJCUに加入。JCUが「労働基準法34条における休憩は適用除外とされるが、勤務時間6時間超の場合は同法施行規則32条2項(みなし休憩・※ことば)が適用される」として、ANAに団体交渉を申し入れました。


団体交渉でANAは「適切な運用がされている」と回答。JCUがその根拠などを求めて質問しても一切答えず、法律条文を読み上げるだけの回答を繰り返してきました。JCUは議論が進展せず、不誠実団体交渉にあたるとして2021年12月に都労委に救済申し立てを行っていました。
都労委の審理中、これまでの対応について、ANAは「社内労組では問題提起されていない」ことをあげ、労働基準監督署の調査に対して答えた内容もJCUに伝えなかったことが明らかになり、組合差別の実態も浮き彫りになりました。
都労委は▽不誠実団体交渉▽不誠実団体交渉は組織拡大を阻止、組合排除を目的とした支配的介入であるーと認定。救済の請求として誠実な団体交渉の実施と、本件の内容を従業員の見える場所に掲示および謝罪文の交付の命令を出しました。
多喜さんは「1月のJALの羽田空港衝突事故でもそうだったように、客室乗務員は乗客の安全が最大の使命です。任務を果たすために休憩は必要です」と訴えました。