練馬区の西武池袋線石神井公園駅南口で進む第一種市街地再開発事業（石神井町3丁目地内）をめぐり、地権者と地域住民9人が東京都に対し、再開発組合の設立認可取り消しを求めている行政訴訟で、控訴審の第一回口頭弁論が13日、東京高裁（中村也寸志裁判長）で開かれ、同日結審しました。来月1月22日に、判決が言い渡される予定です。

　訴訟は、2022年8月に提起。石神井地区は住民と行政が10年近く話し合いを重ね、11年に「景観計画」を策定し、翌12年に「地区計画」（以下、「変更前地区計画」）を決定。その中に、石神井公園からのスカイラインを整えるため、公園から同駅に向けて建築物の高さを徐々に高くし、最高35メートル（例外で50メートル）に抑えるルールがありました。

　わずか8年後、区は住民合意を経ずに地区計画を変更。高さ制限を緩和・撤廃し、同駅南口前に約100メートルの超高層ビルなどを建てる再開発事業を強行しています。

　再開発組合は今年2月から、解体工事に着手。今月初頭には、地権者の控訴人が住居兼医院として長年暮らしてきたビルを解体。開発地域はすでに更地にされ、27年度に超高層ビルの竣工が予定されています。

厳しい裁判覚悟

　東京地裁で原告は、主に▽地区計画を変更すべき理由、高さ制限を撤廃する必要性と根拠▽景観計画が定めた高さ基準との整合性ーの2点について、法廷で争いました。

　しかし、地裁判決は「（練馬区は）建築物の最高限度に係る制限を緩和しなければ、再開発事業ができないのかを考慮すべきであったとはいえない」「土地の高度利用や建物共同化の障害になっているのかという検討をすれば足りる」として、最大の争点であるはずの高さ制限の理由は「考慮要素ではない」と判断しました。

　弁護団は、「高さ制限は、土地の高度利用や建物共同化等をする際の歯止めとして定めるもの。障害になるのは当たり前」だと反論しています。

　原告らは「マスタープラン（第１種市街地再開発事業の許容を前提に15年改定）に記載があれば、住民の考えを無視して再開発を進めてよいという考えは、地域住民によるまちづくりを根底から否定し、将来に大きな禍根を残す」と危惧。厳しい裁判になることは覚悟の上で、８月に控訴しました。

証拠や事実なし

　閉廷後、訴訟代理人の尾谷恒治弁護士が、控訴理由書について説明。「原判決は法令適用の前提となる重要な事実について、審理不尽、事実誤認がある」と述べました。

　原判決は判断の前提として、「（練馬区は）変更前地区計画の決定がされた当時は共同化や法定再開発の具体的な進展がなかったため、建築物の高さの最高限度に係る制限は小規模な共同化を想定したものであった」とする、区の主張を認定。

　その根拠として、地裁は「15年８月から16年８月に区が開催した、石神井公園駅周辺地区まちづくり懇談会」に関するもの、「17年2月、4月、18年10月に区と準備組合が開催した、市街地再開発事業の検討状況報告会」に関する２点を、認定事実としました。

　尾谷弁護士は、「（判決に引用されている）『石神井公園駅周辺地区まちづくり懇談会ニュース』や『検討状況報告会開催結果のお知らせ』のいずれにおいても、共同化が必要な場合には高さ制限を見直すといった議論は一切記載されていない」と指摘。これに対し、都や参加人の練馬区、再開発組合から反論は出ていません。

　「裁判所が事実を認定するには証拠によらなければならないが、その証拠も、前提となる事実も、どこにも書いていない。反論さえない。おかしなことではないか」と、尾谷弁護士は厳しく批判しました。

東京民報2024年12月22日号より