国土交通労働組合(国交労組)は12月27日、日本航空機と海上保安機の衝突事故(2024年1月2日)をめぐって記者会見で見解を述べました。国交省が25日に事故の経過報告を公表したことを受けたものです。

事故は、羽田空港C滑走路内に停止していた能登地震への支援物資を積んだ海保機に、着陸してきたJAL機が衝突し炎上したもので、海保機の乗員は1人重傷、5人が死亡しています。JAL機の乗客は脱出時に1人が重傷、4人が軽傷を負っています。JAL機は衝突後、滑走路上を滑走した後に滑走路から逸脱し、草地で停止後に全焼しました。
今回報告されたのは①運輸安全委員会の調査で判明した事故の経緯②海保機、羽田空港管制塔、JAL機の事故発生の要因など③衝突後の被害状況ーなどです。
これまで国交省は事故を防ぐ立場から緊急対策を講じるなどしてきましたが、国土交通労組は実務を担う立場から、より安全を確保するために複数回に渡り提言をしています。
今回の会見で同労組の佐藤比呂喜中央執行副委員長は「航空行政は事故原因の個人責任を問わず、安全文化の醸成が不可欠」だと見解を示しました。「個人の(刑事、民事)責任を問うことは不利な証言をためらわせかねない」として、正確な原因究明にマイナス要因となることから安全強化につながらず、国際ルールにのっとった対応が必要だと強調しています。また一部、ネットなどでは憶測による犯人探しが始まっているとして、事故調査の世界の流れから逸脱していることから、「そのような論調にならぬよう協力して欲しい」と訴えています。
国交労組では、夕方の発着数のピーク時に航空管制業務に負荷が増していることから、▽増大に応じた体制の充実▽支援機能としての滑走路誘導灯を(現場の声をもとに)認識しやすい物に改善することーなどを、提案しています。
一方で国交省は羽田、成田以外の国内空港においても、さらなる発着便数の増大を予定しています。しかし航空管制官の増員が、育成までに最低でも2年かかることや定年退職者を踏まえると、業務負荷が軽減されず増える可能性もあるとして、事故を起こさない疲労管理も含めて全国規模で考えていく時だと述べています。
さらに今回の事故のJAL機はエアバス社製A350機であり、金属より耐久性はあるものの耐熱性が低い炭素系強化プラスチック(CFRF)で機体が構成されています。同素材の加工中の粉塵は針状の構造で人体に影響があり、皮膚に接触するとかゆみ、吸い込むとアスベスト同様に肺が傷つくといいます。事故現場での燃焼温度が6500度ほどまで上がり、粉塵の舞い上がりや滞留が起きていると思われることから、「消火や事故調査にかかわる人員への防護装備が必要だ」と警鐘を鳴らしています。
佐藤氏は「航空行政は経済優先ではなく、安全優先であるべき。安全あってこその経済発展だ。(行政の)スケジュールありきではなく、立ち止まってやめる、改善することが最も必要不可欠です」と求めています。
東京民報2025年1月19日号より