石破首相が1月24日、施政方針演説に臨みました▼首相として初となる施政方針演説で、打ち出したのが「楽しい日本」です。石破氏は、堺屋太一さんの言葉をもとに、明治期の中央集権体制の「強い日本」、戦後復興の「豊かな日本」につぐ、これからの日本のあり方だといいます▼首相は「楽しい日本」に必要なこととして、「すべての人が安心と安全を感じ、自分の夢に挑戦」し、「多様な価値観を持つ一人一人が、互いに尊重し合う」ことをあげました。言葉としては立派ですが、施政方針で盛り込んだ政策は、旧態依然のものです▼「安心と安全」というなら、いま最も庶民が苦しんでいるのが、長引く日本経済の衰退のもとで起きた、異常な物価高です。施政方針は、「生産性の向上支援」「労働市場改革」など、歴代自民党政治が掲げた政策を踏襲しています。「多様な価値観」についても、焦点となっている選択的夫婦別姓の問題にすら、施政方針では語りませんでした▼堺屋氏をはじめ、どこか「借り物」のような空虚な言葉が、並んだ石破氏の演説。企業献金の禁止や、大企業の空前の内部留保を賃上げの原資に回すこと、核兵器禁止条約への参加など、首相が語らなかった抜本的な改革こそ求められることです。
東京民報2025年2月2日より