非正規春闘 10%の賃上げ実現を 経団連に要請も拒否〈2025年2月16日号〉

 「スシローでは地方に時給1000円で働く人がいます。週6日、朝9時から夜9時まで12時間も働いて何とか生活を維持している組合員がいます。ここまでしないと生きていけない。これのどこが先進国といえる実態なのでしょうか」―今季最低気温となった朝の都心に首都圏青年ユニオン回転寿司分会員の声が響き渡りました。名だたる大企業で構成する日本経団連前で5日、非正規春闘の行動が行われました。

経団連前で賃上げを求め訴える参加者=2025年2月5日、千代田区

 非正規春闘は従来の春闘から非正規労働者が除外される中で、「物価高騰に見合った賃上げがない」として、ナショナルセンターの枠を超えた個人加盟の労働組合による実行委員会で実施され、今回で3回目。昨年は117社と交渉し70社から有額回答を得ています。中でもスーパーのベイシアでは9000人の賃上げ、回転寿司チェーンのスシローでは組合員店舗で10.7%(店舗平均)の賃上げを勝ち取っています。

 今年は新たにエッセンシャルワーカー、非正規公務員も非正規春闘に参加。方針に▽10%以上の賃上げ▽正規・非正規の均等待遇▽エッセンシャルワーカー、公務非正規の大幅賃上げ▽年収の壁を超える大幅賃上げ―を掲げており、回答内容によっては3月にストライキを辞さないとしています。

 この日の行動は経団連の他、約2万9000人の労働者、委託労働者を大合理化の下で解雇、委託解除を強行した宅配最大手のヤマト運輸への要請行動を展開。併せて当日、翌日には「非正規春闘・賃上げ相談ホットライン」を実施し、記者会見も行われました。

 経団連では事前に訪問を告げていたにもかかわらず、警備員らが入口に立ちはだかり、要請書の受け取りを拒否。ヤマト運輸は入口前で要請書だけは受け取りました。

企業の責任果たせ

 非正規春闘実委では1月に「非正規労働者生活・賃金実態調査」を実施。590件の回答を得ています。回答者の特徴として▽57.9%が時給1400円以下▽74.2%が月収20万円未満▽年齢は50代が34.9%、40代が24.9%ーとしています。実委は「就職氷河期世代からの回答が多い」と強調しています。

 また、99.3%が物価高騰を実感していると回答し、そのうち78.8%が生活が苦しくなったと答えています。一方で昨年4月から賃上げがないという回答は53.1%で、上がっても時給50円未満が28.4%という結果となっています。アンケート結果から浮かび上がる非正規労働者は余剰時間や腰掛的にパート・アルバイトで働いているのではなく、非正規労働で生計を立てているのが実態です。

 勤務する企業規模は大企業が48.1%、中小企業が43.9%と均衡していることから、「大企業の果たす役割、責任は大きい。経団連は非正規雇用労働者の10%賃上げを政策課題とし、会員企業に働きかけるなど社会的責任を果たして欲しい」と強く訴えています。

 今年の春闘は中小企業の賃上げが焦点とされる報道が続く中、非正規労働者の「こんな賃金では生活ができない」との声に目を背け続ける財界、政界に向けて、実委では「職場に労働組合のない労働者が春闘に参加するための回路が必要だ」として、ホームページ上で労働相談フォームを開設して誰でも一人で参加できる用意をしています。

東京民報2025年2月16日号より

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