避難者切り捨ての世相反映 目黒区 被災者追い出しで高裁判決〈2025年2月23日号〉

 東日本大震災の津波で住居などすべてを失い、宮城県気仙沼市から目黒区が「応急仮設住宅」として提供していた区民住宅に避難した女性(70)に対し、区が住宅供与打ち切り後も退去しなかったとして家賃相当額820万6790円の損害賠償を求めた裁判で、東京高裁(筒井健夫裁判長)は12日、1審判決を全面的に容認し、女性の控訴を棄却する判決を言い渡しました。

判決の解説をする山川弁護士(右)=2025年2月12日、目黒区

 応急仮設住宅の供与打ち切りに伴い、東京都や世田谷区などは希望する被災者に廉価な都営住宅、区営住宅を用意。一方、目黒区は不動産のチラシを4枚郵送しただけの支援でしたが、東京地裁に続き高裁も、区の対応は「相応の支援措置」であり、被災者支援は「各自治体の裁量に委ねられている」と認めたことになります。

出るに出られず

 女性は被災時、気仙沼市内の避難所に疾患を抱える夫とともに避難。夫の容態が悪化し、治療のために市のすすめで、友好都市の目黒区が募集していた避難所に申し込みました。

 11年5月から、夫婦は区が指定した区民住宅に入居。16年9月に区の指示で他の区民住宅に転居しましたが、月額19万円余の高額な家賃については知らされていませんでした。

 18年3月末に住宅支援が終了したものの、余命を宣告された重篤な夫の看病で、女性は身動きが取れない状況。転居先も決まらない中、同年10月に夫は死去しました。

 女性が区民住宅を退去する際、区は画鋲の1本までも残留物とみなし、家賃として弁償額に加算しています。

政府の姿勢追認

 同日開かれた報告集会で、訴訟代理人弁護士の山川幸生弁護士は「不当という言葉が軽く感じられるほど、ひどい判決」と憤慨。国が定める「災害救助法」では自治体に「救助の万全」を求めていますが、「受け入れ自治体の気分でもって、被災者への対応に天と地ほどの差があっても構わないということになる。なんと情けない判決か」と嘆きました。

 女性が入居時に区から家賃や損害金などの説明を受けていないことは「説明義務違反」だと主張していましたが、判決は「信義則に違反すると認めることはできない」と判断。山川弁護士は「消費者法の世界ではあり得ない」と、厳しく批判しました。

 さらに山川弁護士は、「2015年頃から、被災者に対する日本政府の姿勢が変わった」と指摘。国内にはびこる避難者切り捨ての世相を裁判所が追認していると説明し、「裁判所を変えるには、政治を正していかなければならない」と述べました。

 被告の女性は判決を受け、「もっと優しい判決がいただけるかと思ったが、とても残念で悲しい」と肩を落としました。

 日本共産党、立憲民主党、れいわ新選組の目黒区議も参加。共産党の岩崎ふみひろ区議は、「引き続き、支援に向けて頑張る」と意気込みました。

東京民報2025年2月23日号より

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