日本国憲法を守り生かすのか、自民党政権が狙う改憲で「戦争する国」に突き進むのか―憲法と平和をめぐる激しいせめぎ合いが続く中で、来年、憲法公布80年の節目の年を迎えます。世界各地で武力紛争が相次ぎ、日本でも安保法制が成立したもとで戦争の危機が迫っています。5月3日の憲法記念日を前に、昨年、「平和主義者の拠点」にと、日本に初めて誕生した「9条の家」(杉並区)を訪ねました。

地下鉄丸ノ内線・新高円寺駅から西に向かって歩くこと約10分、車の往来が激しい青梅街道から静かな住宅地に入るとすぐに洋館風の民家が現れます。「9条の家」です。2階部分の外壁2カ所に掲げられたカラフルな看板が目を引きます。
1階の大きな窓には、憲法9条の条文が大画面に映し出され、道行く人に常時アピールしています。入り口には喫茶メニューの看板が置かれ、「あなたのCAFE 君の図書館」とのキャッチコピー。
中に入ると背丈ほどもある大きな振り子時計が出迎えます。説明書きには「九条時計」とあり、憲法違反の安保法制が参院で可決成立した2015年9月19日午前2時19分から停止中とのこと。安保法制が廃止されれば再び動き始めると書かれていました。

館長の金野奉晴(こんの・ともはる)さん(76)に案内していただきました。1階はブックカフェで、10数人が軽食を取りながら交流や情報交換ができる場になっています。電子ピアノやオーディオが設置され、歌声喫茶にもなると言います。書棚には憲法や平和に関する書籍が並びます。
2階はプロジェクターで動画上映も可能な集会室です。30人は座れるいすが配置され、ミニ講演会や学習会など様々な催しで活用できます。動画配信スタジオが併設され、「9条の家」の活動を動画配信サイトのユーチューブなどで発信しています。
まるごと9条の碑
「9条の家」は、昨年10月31日にオープン。名誉館長にジャーナリストの伊藤千尋さん、顧問に憲法学者の小林節さん、理事長に金野さんが就任。設立趣意書で「『戦争ゼロ、平和100%』の世界平和をハッキリと目指す拠点として、世界平和実現の象徴としての『憲法9条』を最前面に押し出し掲げる『9条の家』を創立して9条を活かす行動を開始する」と高らかに宣言しました。
もともとは金野さんの亡くなった姉が住んでいましたが相続する人がいなくなり、金野さんが所有することになりました。最初は「9条の碑」を設置することを考えましたが、スペースの関係で断念。「9条の碑」に詳しい伊藤さんに相談したところ、「いっそ建物全部を9条の碑にしようということになりました」(金野さん)。

「『9条の会』があっても拠点がないと、何かをやろうにも見えにくい。『9条の家』をつくったことで運動が可視化され、そのことによって人との交流が生まれます」と金野さん。実際、地元や他地域の「9条の会」や平和団体メンバー、地方議員も訪れ、情報交換の場となっています。
副館長でブックカフェ担当の辻美智子さんは、多摩地域で初めて「9条の碑」を府中市で建立した「けやき合唱団」メンバーの一人です。杉並区への転居をきっかけに手伝うことになりました。
辻さんは「世界中で起きている戦争をすぐにやめさせることはできないけれど、憲法9条のある国民として関心を持たないのは悲しいこと。自分たちができることを多くの人と関わりながらやれたらいいなと思っています」と話します。













