街角の小さな旅57 学究活動の姿を奥行き深く 明治大学博物館と駿河台界隈〈2025年5月11日号〉

駿河台はJR御茶ノ水駅の南側の小高い台地にひろがる街です。地名のいわれは徳川家康の江戸入府に従って駿河から下向した家臣がこの地に屋敷を与えられたことに由来します。その後、幕府倒壊、西欧化・近代化のもとで後の明治大学や中央大学などになる法律学校などが集積。いまも学び舎のまちとして学生たちで賑わっています。

 明治大学博物館はその一角にあり、アカデミーコモン棟のエントランスでは建学の精神「権利自由、独立自治」のレリーフが迎えてくれます。

明治大学博物館

 博物館には大学の研究者たちが絶え間ない努力と研鑽を重ねて調査・研究、収集した45万点にも及ぶ遺物や資料が収蔵されており、3つの常設展示場でその一部が公開されています。

 考古部門では旧石器時代から古墳時代にまたがる各時代の遺跡で発掘された遺物・資料などを、商品部門では原材料から完成品に至る商品の製造工程の展示や伝統工芸品の歴史的変遷を展示しています。

 特筆すべきは刑事部門で、はじまりは法学研究において実物実見を重視する立場から蒐集された江戸時代・明治初期の刑具・拷具、古文書を展示する博物館として設立されたもので、日本では唯一の施設です。白黒映画時代の捕り物シーンで登場する刺叉さすまたや十手、拷問具。西欧のギロチンのレプリカなども展示されています。

 大きなスケールの展示館ではありませんが、研究の成果としての資料の見学に止まらず学究活動そのものに立ち会うことのできる奥行き感のある博物館です。

古書店街

 博物館から明大通りを下った駿河台下交差点に立ち、右向こうに歩むと神田神保町の古書店街、左に進むとスポーツ用品店街、振り返ると楽器店街が並んでいます。

古書店街

 大通り沿いの古書店街は万葉集や源氏物語などの古典をそろえる店、初版本にこだわる店、浮世絵版画や黄表紙、戯作本など江戸期の判物、シナリオやパンフレットなどを求めて演劇人や映画関係者が通う店、哲学書や経済書を店一杯に積み上げている店など130もの店に数百万点の書物や美術作品が集積する世界一の本の街です。

 古書街のはじまりは現在の岩波書店の創始者が関東大震災で焼け出され、古本屋をはじめたこと。第2次世界大戦では「解体新書」の原本を扱っている店があるということでアメリカ軍が空襲を避けたといいます。

 どの店も日差しで本が焼けるのを避けるため北向きの店構えです。

 神田には20世紀初めには3万人もの中国からの留学生が下宿し、古書店街の裏のすずらん通りは日本で最初の中華街がつくられたところ。いまも、元祖冷やし中華のお店が頑張っています。

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