林泉が育んだ「杜(もり)の思想」 『緑地と文化―社会的共通資本としての杜』 石川幹子 著〈2025年6月15日号〉

 「林泉」という言葉を辞書で引くと、「木立や流水・池泉などのある庭園」と説明されます。

 本書は、その「林泉」が日本の都市文化を支える存在だったと指摘しています。林泉は閉じられた場所ではなく、四季折々の風情を楽しむ人々が行き交う開かれた空間だったといいます。特に東京は、江戸開府以来、大小の林泉が営まれる「『林泉都市』の名作」でした。

岩波新書 2025年
940円+税
いしかわ・みきこ 1948年宮城県生まれ。東京大学名誉教授。都市や環境の計画・設計で受賞多数。東京都都市計画審議会委員、公園審議会委員など歴任

 このようにして人々に愛されてきた都市の緑が、明治期以降、公園などに指定され、東京の「緑のインフラ」となって都市生活を支えてきました。

 現在の神宮内苑も、江戸時代は井伊家の下屋敷で、モミの木の巨大な古木があり、見物客が訪れる場所でした。梅や桜、萩の見物、キノコ狩りなどで、多くの人が訪れる「共楽の地」だったといいます。

 そして神宮外苑は、その内苑と連絡道路(裏参道)で結ばれ、公衆が集って小川や泉を愛でる新たな「林泉」として計画されました。土壌改良や植樹などに全国からの奉仕団が集まり「民衆がつくった杜(もり)」です。

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