苦い歴史を笑いと涙で 前進座「笑いごとではありませぬ!」 戦争中の噺家たちの青春〈2025年8月31日号〉
- 2025/8/31
- 文化・芸術・暮らし
劇団前進座は戦後80年特別企画として、戦争中の落語界で生きる若い噺家(はなしか)たちの青春を描く舞台「笑いごとではありませぬ!」を公演します。戦時にふさわしくないと落語界が53の演目を封印した「禁演落語」や、国民の戦意高揚のためにつくられた「国策落語」を通して、噺家たちの苦い歴史を笑いと涙を交えて舞台化します。23日には、プレ企画となる「秋の芝居塾」が開かれました。
芝居塾では冒頭、今回の舞台の創作にも協力した、話芸史研究家の柏木新さんが、当時の新聞記事などを示しながら、禁演落語と国策落語について、解説しました。
禁演落語は、当時の講談落語協会が昭和15年(1940年)に、戦時中にふさわしくないとして、53の演目を自主的に封印したもの。遊郭や、不義・好色を扱っていることなどが理由です。

柏木さんは、禁演落語を決める直前にあった「吉本爆笑実演大会」の金語楼劇団の公演プログラムを紹介。演じるはずだった芝居「花婿三重奏」が、恋愛が前面でふさわしくないとして中止になったため、演目が「伜せがれは生きてゐる」に急きょ差し変わったことが書かれています。柏木さんは「この事件が、落語界が禁演落語の決定へ、腹を固めるきっかけになったのでは」と推測しました。
台東区には、封印された演目のお墓「はなし塚」が建てられています。柏木さんは塚の裏面に「名作を弔い…」と書かれていることを紹介し、「本当は演目を葬りたくない噺家たちの思いが表れている」と語りました。
国策落語は、国民の戦意高揚を目的に、軍部の指導で創作された落語です。戦費調達のための債券購入を勧めるものや、スパイ監視を呼びかけるものなどがあります。
柏木さんは「落語の登場人物は本来、熊さんや八っつぁんですから、戦意高揚なんてとても似合わない。『もう戦争は止めようよ』なら分かりますが。そのため、銃後の日常を落語にして、どうやって国民の考えを戦争遂行に持っていくかが描かれた。恐ろしいことです」と強調しました。
逆境に負けず生き
芝居塾では続いて、落語家の立川談之助さんが禁演落語、林家三平さんが国策落語を口演しました。











