英スピは語学習得に逆効果 会話でつながる楽しさを 英語教育専門家 池田真澄氏に聞く〈2025年9月21日号〉

 都教育委員会は今年で4回目となる都立高校入試の合否に活用する英語スピーキングテスト(英スピ、ESAT―J)を、11月23日に実施します。導入直後から様々な問題が指摘され、公平性・公正性への批判を招いていますが、都教委は「適正に行われた」との姿勢をとり続け、改善も見られません。一方、中止を求める声と運動は強まるばかりです。本来の英語教育のあり方から見てテストの何が問題か、なぜ改善が進まないのかを英語教育の専門家で、都立高校で長く英語を教えた経歴もある池田真澄氏に聞きました。

 ―都教委は「小・中学校で身に付けた英語によるコミュニケーション能力を、高校でさらに向上させるため一貫した英語教育を進めている」として、その一環として「どれぐらい話せるようになったか」を確認するためにESAT―Jを実施すると説明しています。

 テストを推進する人たちの多くは、テストはコミュニケーション力を伸ばすという前提に立っています。しかし、そんな単純な図式は成り立たないし、客観的なデータもありません。

池田真澄氏(いけだ・ますみ)の略歴 定年まで都立高校教師をした後、英・シェフィールド大学院で応用言語学を修了、元大学講師。単著「現場発!人間的な英語の授業を求めて」。新英語教育研究会副会長。

 コミュニケーション力を伸ばすには▽少人数による授業などの環境整備▽英語とともに日本語のコミュニケーション能力を伸ばす▽コミュニケーションの楽しさを体感する―ことが大切です。

 コミュニケーションの楽しさは、単語や文法を使って自分が表現したいことを表現する、現実の相手を知り、自分を伝えることで人とつながることができる、ということを実感する中で得られるものです。

 ところが日常生活で英語を使わない日本人にとって、英語の発音や文法は最大の難関です。日本人が英語をマスターするには2400~4200時間が必要とされていますが、小中学校での授業時間の合計は、わずか630時間です。不十分な時間の中で「話す力」を試される生徒は、「間違ってはいけない」という心理が働き、萎縮し、しゃべれなくなってしまいます。

 まして入試に使われるとなればなおさらで、間違いをしないように、なるべく話さないで終わらせるようになります。間違いを訂正しながら学ぶ言語の習得にとってマイナスになる側面があります。

利潤と公平両立できず

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