落語は「人間」を描く話芸 古典を演じて芸歴60年 噺家 むかし家今松さんに聞く〈2026年5月3,10日合併号〉

 落語家のむかし家今松さんは、人情噺(ばなし)から滑稽噺まで数々の演目を演じる古典落語の名手として知られます。芸歴60年を迎え、最近では著名な落語『芝浜』を新たなオチで演じていることでも、評判を呼んでいます。話芸史研究家の柏木新さんがインタビューしました。

 柏木 芸歴60年、おめでとうございます。

 今松 落語は難しいですね。60年やって、これか、という気が、いつも、いつもします。

 柏木 1965年に十代目金原亭馬生に入門された経緯は?

「60年やって、落語は難しいというのが実感です」(今松さん)=撮影・五味明憲

 今松 大学に行っても4年経ったら、就職しないといけない。満員電車に乗るのが嫌で、だったら職人の世界が良いんじゃないかと。噺家も職人の世界の一つ、という感覚ですね。師匠を探してあちこちの寄席を聴いて、あまりお年寄りのところはよそう、マスコミに売れてるのも除外しよう(笑)、それで噺がしっかりしている人と探すうちに、馬生この人ならとなったんです。

芝浜に新たなオチ

 柏木 今松さんは、数百の演目をお持ちです。しかも、一つひとつが、その噺の本質をとらえたものになっています。

 今松 最初にも言いましたが、落語は難しいというのが実感ですね。「ありがたい」という一言も文字で書けば同じですが、言い方ひとつで、いろんな感情を表します。一人でいろんな役を演じるから、この人はどういう心持ちなのか考えて話さないと落語は成り立たない。極端に言えば、落語はさまざまな人物を通じて、「人間とはこういう生き物なんだ」と示す話芸だと思っています。

 柏木 年末の落語といえば『芝浜』ですが、師匠は新宿末廣亭で、年末のトリで、芝浜を演じるのが恒例でした。

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