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津波が35`も遡上Tsunami

堤防の亀裂や液状化66カ所


3・11大地震時の荒川では

 

河川敷に発生した亀裂(河口から7・5`地点 東日本大震災では、東北地方の被害の陰に隠れて目立たなかった東京都内の被害実態がしだいに明らかになるに伴い、防災対策の強化を求める声が強まっています。大地震時に荒川の河口や沿川では、何が起きていたのか。改めて紹介してみました。
 東京都は津波防災計画で、伊豆7島や小笠原諸島の各島ごとに東海地震や、東海・東南海・南海の3地震が連動して起きたときなどを想定して避難対策をとっています。しかし東京湾内については、津波の防災計画がないのが現状です。東京湾は、東海地震などの津波が侵入しても、湾の入り口が狭いために津波が減衰し、被害をもたらすようなことはないとされてきたからです。湾内で直下型地震があっても、波高が50・程度で心配ないとされています。東海地震なども、国のシミュレーションでは、1〜2・の波高が予想されていますが、高潮対策で対応できるとされてきました。
 今回の津波について、国土交通省関東地方整備局荒川下流河川事務所の調査によると、大地震発生後、荒川の河口部で通常の水位より0・8・高い津波が押し寄せ、30分間で最大約1・7・の水位変動が観測されました。
 押し寄せた津波は荒川を遡上、河口から21・・地点の岩淵水門(隅田川との分岐地点)で1・2・の水位変動を記録、なお遡上し、35・・地点の埼玉県志木市内の秋ヶ瀬取水堰にぶつかりました。
 荒川下流河川事務所では、「堰から上流の遡上は確認していない」としています。堰がなければ、「河口から50・・に達したのではないか」と地元で話題になっています。
 同河川下流管内では、最大震度5強を観測したほか、湾内に2・の津波警報が発令されました。ゼロメートル地帯の江東区の一部では、マンション1階の住民が2階へ避難したほか、地下鉄東西線の南砂町駅東口北側出口が、出水防止のため閉鎖されました。
 「今回の津波の襲来時は、平穏な状況だったが、大雨による洪水などの危険のあるときと重なったら、どうなるのか」と心配する声があがっています。

大地震時の荒川流域 共産党 防災計画見直しを要望

液状化発生カ所と被害箇所 

 足立区の日本共産党区議団は4月22日、区長に津波の防災計画策定や避難場所の指定、訓練の必要を申し入れました。
 同河川事務所では、荒川流域の津波対策について、「中央防災会議で見直しの動きもあるが、まだ具体的な話はない」と話しています。
 石原都知事は4月12日の記者会見で「都の地域防災計画を見直す考えはないか」と問われ、「その必要はある。東京湾は一種の閉鎖水域だが、大島近辺を震源とする地震が起こったら、とんでもない津波が来る。多摩川を含めて荒川、隅田川は一種の細長い入り江だから甚大な被害が出る恐れは十分ある」とのべています。総務局防災部では、「今回の教訓を洗い出し、都をあげて、対策をとっていこうと考えていますが、どういうスケジュールでやるかはまだ決まっていない」と話しています。

堤防が崩れる心配は


 一方、同河川事務所の地震直後の調査によると、堤防や河川敷で、液状化現象などによる亀裂や隆起が、小規模のものを除き66カ所で発生したことが明らかになりました。  
 堤防部では、河口から3・5・・の地点で、張り込んだブロックの隆起や亀裂など3カ所、河川敷で液状化29カ所にのぼります(表参照)。河川事務所では「耐震補強を進めてきたし今後も進めていく」としています。
 液状化したところは、地下の砂地盤の対策をとらなければ、震度6や7が予想される東京の直下型地震で液状化が起こるとみられます。堤防が破壊されれば、下町一帯から日本橋や大手町まで浸水する危険が想定されています。ライフラインは甚大な被害を受け、復旧に長期間を要することになります。
 

                  (東京民報2011年5月22日号に掲載)