【書評】絵本が刷り込む戦争美化 『増補版 戦時下の絵本と教育勅語』 山中恒 著〈2025年3月23日号〉

 著者は、戦時下の体験を描いたノンフィクション『ボクラ少国民』シリーズなどで知られます。

 「はじめに」で、「教育勅語」がどういうものか、自身の子ども時代の体験も交えて解説しています。元旦や紀元節(2月10日)などに学校で行われる儀式で、教育勅語を校長が「奉読」します。あるとき、勅語奉読の最中に誰かがビー玉を落としたことがあったといいます。ビー玉の転がる音に、みんなが凍りつきました。「それは、あとでビー玉を落とした子どもに加えられる体罰の恐ろしさを想像しただけで、身の毛もよだつ思いだった」からでした。

子どもの未来社 2025年
2000円+税
やまなか・ひさし 1931年北海道小樽市生まれ。児童読み物・ノンフィクション作家。著書に『戦時児童文学論』『靖国の子』など

 本文では、「美談をつくりあげる絵本」「日の丸のもとに」「子どもも働け」など8章に分けて、当時の絵本に教育勅語の精神や、侵略戦争美化が、いかに巧妙に織り込まれていたかを検証します。

 貴重なのが、それぞれの章で、当時の絵本をカラーで複数、採録していることです。2章「歴史観を刷り込む絵本」に掲載された『学校エホン 国史ノ巻』は、天皇に忠義を尽くしたとされる人の歴史を語る本で、最後のページでは日本軍が謀略で起こした満州事変を「支那の兵隊が悪いことをした」と描いています。

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