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有料WEB紙面版 6月19日号
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【1面】
- 物価高騰から都民守れ 平和、暮らし巡り論戦 都議会 代表質問に藤田都議
- 「未来に希望持てる政治に」山添氏 参院選目前、全都を駆け
- 新型コロナ感染 都内の状況
- コラム・一分
【2面】
- 被害者の苦しみ向き合え 全国公害被害者総行動 2年ぶりの決起集会
- 障害者の参政権保障を 参院選前 共産党都議団が要請
- 事実に沿った憲法判断を 年金引き下げ違憲訴訟 高裁で結審
- 校則見直し生徒の意見表明保障を 一般質問に池川友一都議
- 立川市議選 共産党5人当選へ全力
- 【コラム 教室の風】いいときの気分を
- フラッシュ@T
【3面】
- 京王バス 人権侵害の暴言でうつ パワハラ訴え労災申請
- 足立区サポーター 山添質問を街で上映「応援の思い共有して」
- オスプレイ 米で墜落、5人死亡
- 【連載コラム】いま考える戦争と平和➃ 軍事費倍増計画の震源地
- とうきょう人
- 街角情報
- とうきょうクロスワード まちがいさがしポカポ家族 詰碁・詰将棋 問題と前回の解答
【4面】
- 読書 今月の本棚と話題
- フラヌ~ル遊歩者通信 その38 梅
- パシャ
- 絵手紙
- みんなの広場
- 漫画「ママはmin♡minギャルママ」
◆テキスト版◆
以下に、各面のトップ記事などを一部、テキスト版で公開しています。
1面 物価高騰から都民守れ 平和、暮らし巡り論戦
都議会 代表質問に藤田都議
都議会は7日に小池百合子知事の所信表明に対する各派代表質問、8日に一般質問を行いました。日本共産党からは、代表質問に藤田りょうこ(大田区選出)、一般質問に池川友一都議(町田市選出)が立ちました。
横田基地強化
「国連憲章に基づく団結で、一刻も早く戦争を終わらせることを心から呼びかけます」。藤田都議がこう呼びかけた上で最初に取り上げたのは、ロシアのウクライナ侵略を巡って、「軍事対軍事の悪循環や基地の強化を招く重大な問題」についてです。米軍横田基地を抱える首都・東京にとって、平和と安全に直結する課題です。
5月の日米首脳共同声明で軍事同盟の強化が表明され、すでに全国各地で米軍基地の強化が進んでいます。横田基地(福生市など)では、特殊作戦機オスプレイの配備増強や、アジア・太平洋地域で最大規模となる米軍の南西諸島への緊急展開を想定した実践的訓練が5月に実施されました。横田C130130輸送機の燃料タンクを増強し、最前線に送ることを想定し、そのための大量燃料保管施設の増設工事も契約済みです。
藤田都議は、こうした事実を示し「横田基地は今、最前線直結の基地に変貌している」と強調。米軍による危険な訓練と基地強化の中止、不平等な日米地位協定見直しへの行動を求めました。
またロシアのプーチン大統領による核兵器の威嚇は許されないとして、都が「非核平和都市宣言」を行い、核兵器禁止条約の批准を政府に求めるべきだと要求。戦争の惨禍を伝え、平和の大切さを発信する都平和祈念館(仮称)の建設に踏み出し、収集した空襲体験者の証言ビデオや資料を広く公開し、常設展示につなげるよう提案しました。
小池知事は、安保体制は「我が国のみならず、地域の平和、安定のために重要な役割を果たしている」と表明。非核平和都市宣言について「国の安全保障に関わる問題」だとして拒否。平和祈念館建設については「都議会での一定の審議と合意が必要」と述べただけでした。横山英樹生活文化スポーツ局長は、空襲関連資料の公開について「資料のデジタル化に着手し、より広く活用する」と答弁しました。
物価高騰
藤田都議は家計と経済の危機をもたらしたのが新型コロナとロシアのウクライナ侵略のせいだけでなく、異常な金融緩和で円安を引き起こしたアベノミクスと、自己責任を押しつけ格差を拡大した新自由主義の失敗だと指摘。暮らしと営業を守るため、消費税減税や最低賃金1500円への引き上げなどを政府に働きかけるとともに、賃金条項を持つ公契約条例の制定を提起しました。
生活破壊が進むもとで「暮らしの基盤である住まいへの支援がとりわけ重要だ」と強調。厚生労働省の検討会が住まいを失う恐れのある人向けに家賃補助を含め「普遍的な社会保障施策」の検討を提起したと指摘。厚労相が検討していくと答弁した家賃補助制度の創設について国に求め、都としても決断すべきだと迫りました。
藤田都議はまた、都の補正予算が都民生活と営業の深刻な実態に照らし「極めて不十分だ」として、生活困窮者、失業者への現金給付やひとり親家庭の食料支援、国民健康保険料の負担軽減、子どもの医療費助成の所得制限の撤廃や完全無償化、学校給食費の無償化を求めました。
小池知事は学校給食費の支援について「物価高騰の中でも、必要な栄養バランスを確保した給食で子どもたちの健やかな成長を支えることが重要」と答えました。
藤田都議は物価高騰を価格に転嫁できない中小業者から、直接的な支援要望が強く出されているとして、都独自の事業復活支援金の支給などに踏み出すべきだと要求。小池知事は「円安によるコストの上昇等を踏まえ適切な下請け取引にかかわる支援などを行う」とのべましたが、直接支援への言及はありませんでした。
感染7波への備え
藤田都議は新型コロナの感染第7波に備え、検査体制を強化するよう求め、全国で最も機動的にコロナ患者を受け入れてきた都立・公社病院の独立行政法人化の7月強行の中止を求めました。
藤田都議は、小池知事が所信表明でコロナ対策の検査に言及がなかったと指摘。2020年末に集団感染が起きた障害者グループホームでは、都の集中的検査で感染の連鎖を断ち切ったことを紹介。学校現場でも「PCR検査の実施を広げ、子どもたちの安全な活動を最大限保障していくことが必要」だとして、PCR検査の拡大を求めました。小池知事は「検査を含めて、総合的に対策を進めていく」と答弁しました。
独法化強行
藤田都議は小池知事が都立・公社病院の独法化で「安定的、柔軟な人材確保を行う」と述べたのに、先行して独法化した健康長寿医療センターでは常勤医師が大量離職し、いまだ補充できていないと指摘。「経営効率優先の独法化で、不採算の行政的医療が充実することはない」と強調。独法化中止を求める署名が40万人を超えたとし、「都民や病院職員の理解、納得がないまま独法化してよいのか」とただしました。
知事は質問にまともに答えず、「(独法化後も)戦略的に運営し、都民の生命と健康を守り続けていく」と強弁しました。(2面に関連記事)
重要課題で質問
藤田都議は他にも、都立高校入試に「活用」する英語スピーキングテストの11月実施の再検討、教員不足の打開、ジェンダー平等と痴漢被害対策、パートナーシップ制度の改善と周知、若者支援策の拡充、防災対策における公助の拡充、外環道トンネル工事の事業認可取り消しとリニア新幹線の大深度地下トンネル工事の中止、神宮外苑再開発の都市開発決定の取り消し、気候危機打開に向けた都の取り組みなど、都の重要課題について質問、提案しました。
2面 被害者の苦しみ向き合え 全国公害被害者総行動
2年ぶりの決起集会
「公害の根絶と平和を求めて」をスローガンに掲げ、1976年から毎年6月の環境月間に合わせて行われる「全国公害被害者総行動」が8~9日、都内で開かれました。今年は47回目の開催。コロナ禍の影響で2年ぶりとなる決起集会が8日夜に日比谷図書文化館(千代田区)の会場と全国の公害被害者団体をオンラインでつないで開かれ、現地に22団体103人、オンラインでは33カ所から参加がありました。主催は全国47の公害被害団体などでつくる同実行委員会です。
決起集会では、同日午前中に行われた環境省との交渉について「大阪公害患者の会連合会」の上田敏幸事務局長が報告。交渉の場での山口壯環境相の答弁を振り返り、「評価するところはなかった」と強調。「官僚のつくった答弁書を読むだけで、被害者が訴えているのに声を掛けず、怒りにふるえた」と口調を強めました。
リレートークでは、イタイイタイ病、東京電力福島第一原発事故、大気汚染、アスベスト、水俣病、有明海の干拓事業漁業、カネミ油症、道路公害、化学兵器、基地問題の被害と闘う団体が壇上で訴えました。
「いわき市民訴訟」の伊東達也原告団長は、福島第一原発の廃炉や溶解核燃料(デブリ)の取り出しに関し、まったく先が見通せないと状況を語り、「復興、いまだ遠し」と強調。原発事故で避難を強いられた住民らによる約30件の集団訴訟のうち、福島(生業訴訟)、群馬、千葉、愛媛の4訴訟が今月17日に最高裁判所の判決を受け、国の事故責任が問われる局面にあることを語りました。
「首都圏建設アスベスト訴訟統一本部」の清水謙一事務局長は、前日7日に原告191人が20社超の石綿建材メーカーに対し、全面解決を求めて全国10の地裁に一斉提訴したことにふれ、「被害者はもっと埋もれていると大きくアピールしたい」と述べました。
今年5月に結成した「第3次新横田基地公害訴訟」の奥村博原告団長は、第2次訴訟を上回る1282人が原告になり、東京地裁立川支部に今月20日、提訴することを報告。裁判ではオスプレイの全面的な飛行差し止め、団らんや睡眠時間帯の騒音規制、将来にわたる損害賠償を求めると決意を示しました。
同実行委員会の増田重美事務局長が、閉会のあいさつ。「これからも続く交渉に参加し、お互いに支援し、励まし合い、闘っていこう」と呼び掛けました。
3面 京王バス 人権侵害の暴言でうつ パワハラ訴え労災申請
脳ドックの結果をきっかけに乗務禁止とされたことで精神疾患を発症したとして5月25日、京王電鉄バス(本社:府中市)の男性運転士(63歳)が新宿労働基準監督署に労災の申請をしたとの記者会見が開かれました。支援する京王新労働組合と弁護団らが参加し、担当上司によるパワーハラスメント(パワハラ)の実態を赤裸々に語りました。
運転士は2021年4月に会社の指示により脳ドックを受診。結果に異常の疑いの所見があるとして、同月中に京王電鉄診療所にて「乗務不能診断」を受け自宅待機になりました。5月に再検査のため脳神経外科でCT検査を受け「乗務可能」との診断があり、CT検査画像が京王電鉄診療所に送付されました。これを受け運転士は6月に「乗務可能」と記載された診断書を会社に提出しました。
しかし、営業所長からは「妻と一緒に会社に来るように」との呼び出しを受けたと言います。所長は「煙草をやめるか会社を辞めるか決めろ」と詰問し、運転士は「煙草をやめる」と回答。本人だけではなく、妻の煙草とライターまでその場に置いていくよう指示し従わせました。
後日、同社永福営業所にて会社の用意したひな形で「喫煙所に近寄らない」「(不規則な勤務体制なのに)3度の食事を規則正しくとる」などの"行動計画書"を書くよう終日に渡り強要されました。
京王電鉄診療所の産業医から「会社から連絡があるので仕事に復帰するよう」告げられ、別の日に上司が家庭訪問し、「乗務に戻す」と怒ったように言いました。運転士はそれをきっかけに出勤が出来なくなり、うつ病と診断されました。
診断後の7月、会社側は「辞めさせる気はない」と告げたものの、病休中の今年4月、妻に5月15日付での雇止めを宣言。同社は運転士の休業補償給付金申請に対し、傷病の証明を拒否しています。
反省文の強要、「小学生」と罵倒
弁護団は「密室で終日、行動計画書なる反省文に近いものを、書き続けさせるのは明らかなパワハラ行為。産業医が乗務可能としたのに、会社の対応が異常だ」と批判。また、労組の佐々木仁委員長は「いまどき、あり得ないことと思われるでしょうが、他の事例も聞いている。雇止めはすべきではないとの組合の進言は聞き入れられなかった」と語ります。また、同社が運転士に禁煙を迫ったにもかかわらず、禁煙外来の受診案内などは全くなく、禁煙啓蒙も積極的ではなかったといいます。
運転士の妻は、「乗務停止から、どんどん夫の様子がおかしくなりました」と切り出しました。夫と一緒に会社に呼び出されたことを不可解に思い理由を聞いたと言います。「所長に『(妻を呼び出したのは)この人は小学生だからだよ。泊り(勤務)はやらせないよ』と言われました。それは早朝便に乗務できないことを意味します。高速バス運転士にとって一人前に扱われないということです」と悔し涙をにじませます。
運転士本人は「大好きな仕事。プロですから乗客を安全にお届けするだけでなく、車内の環境にも他の運転士より気を使ってきた」と訴えます。
検査結果理由の退職強要ダメ
国土交通省は2018年、バス運転士の運転中の意識障害などでの急病を起因とする事故をうけて“自動車運送事業者における脳血管疾患対策ガイドライン〟を策定。バス運転士の脳検査(脳ドック、脳CT検査)の努力義務を課し、事業者が任意(表)で対応しています。
国交省の担当は「努力義務ですが、中小の事業者から大企業まで対応しているようです。あくまで安全対策であり、脳検査の結果をもって退職強要や処遇が悪化することはないようガイドラインにも記載している」と語っています。
他方、京王電鉄バスは、脳検査で異常所見が見つかった場合の対応では、「再検査で問題なしとされ、産業医の判断を経て乗務復帰できる」と回答しており、今回の運転士への対応とは大きく異なります。2008年に同社の運転士がパワハラで追い込まれ自殺した事件での反省も全く生かされていません。
佐々木委員長は「60歳以上の運転士は1年ごとの雇用契約なのに、脳検査は5年に一度。検査の間隔に疑問や矛盾を感じるし、会社の対応も理不尽だ。お客様に胸を張って説明できるような解決を早く」と述べています。
4面 読書 今月の本棚と話題
コロナ禍の混乱は自然災害か
『コロナ禍で見えた保健・医療・介護の今後―新自由主義をこえて』
公益財団法人日本医療総合研究所 著
久しぶりに、保健・医療・介護そして福祉の総合的な議論を展開した本に出合いました。新型コロナのパンデミックの中で、日本国民は罹患しても、医療にもかかれないという大変な不安を経験させられました。未知のウイルスによる感染症であったとはいえ、先進国であるはずの日本でなぜこのような「医療崩壊」「福祉崩壊」が起きたのか? この疑問に答える一冊です。
この本は、保健(予防・公衆衛生)、医療提供、介護サービス、そして生活保護をはじめとする福祉を、それぞれの専門的立場から分析した、研究者グループによる集団的労作です。よく保健・医療・介護・福祉と並べていわれますが、財源や歴史的経過など、それぞれ異なった仕組みで運営されています。
それを理解したうえで、現状・課題を整理して今後の展望を描くことはかなり困難な作業です。当書は、若手研究者を中心にこの困難な課題に挑戦し、問題の解決方向を示しています。
政府が進めてきた医療費政策を「公的医療費抑制政策」として把握し「利用者負担・保険料」を増大させ、税金の投入等の公的負担を削減する政策と特徴づけたのは今日的到達点です。つまり、医療は300万人近い従事者と年間44兆円を超える医療費を抱える一大産業であり、製薬企業などの活動の場(もうけの場)でもあります。いたずらに縮小だけを求めることは産業界の望むことではありません。
産業としての規模を確保しつつ税金等の公的負担を回避し、国民の負担を強化する方法がとられます。
この他、地域医療構想の実施、地域包括ケアシステム導入、医療・介護への外国人労働者の導入の可能性、最後のセーフティネットとしての生活保護制度などの、新たな動向と議論も紹介しています。そして、「一見すると自然災害に見えるコロナ禍も、新自由主義の各種政策により被害が増幅された。この新自由主義的政治・経済を問い直し、転換を図らねばならない」と結んでいます。
ちょっと難しいところもありますが、医療福祉の関係者、議員等のオピニオンリーダーにはぜひ読んでほしい一冊です。
(松原定雄・ライター)
明日へ生きる希望が湧く
『山本周五郎 人情ものがたり 市井篇/武家篇』
山本周五郎 著
この本は、良心的な心の糧になる本を出し続けている本の泉社が、山本周五郎の「人情ものがたり」を描いた作品を「市井篇」六作、「武家篇」九作に分けてオリジナル編集した短編小説集です。
人生にはどうしようもない辛い事や悲しい事がたくさんあります。この十五作は共通してそんな庶民、武士とその妻女の心に寄り添い、その心根をしみじみと描き出しています。
市井篇の「おたふく」では、彫金彫り職人貞二郎の女房おしずのひたむきな愛。「ちゃん」では、安物が歓迎されている時勢から取り残されていても伝統の「五桐火鉢(ごとうひばち)」づくりをする重吉とその家族の貧乏生活とほのぼのとした家族の絆。
武家篇では、困っている人々にやさしい武士と妻女を登場させています。
「雨あがる」の浪人三沢伊兵衛は、半月も雨が降り続く梅雨時の木賃宿で客たちが仕事も出来ず困り果てている時、妻からきつく禁止されていた武術の賭け試合をして、その金で米、魚、酒をたくさん買い込んで泊まり客の気分を慰めます。この賭け試合のために仕官口がだめになるのですが、泊まり客たちのために賭けをしたことを知る妻は、「これからはいつでも賭け試合をなすって下さい」「気の毒な方たちを喜ばせてあげて下さいまし」と言います。
「裏の木戸は開いている」の高林喜兵衛は、困っている人を助けようと、裏木戸に鍵をつけず、誰でも持っていけるように小さな木箱に金を入れおり、返しても良いし、返さなくても仕方がないと思っています。
周五郎の眼は困っている人にやさしく、その作品はどんな苦境の中でも希望の光を注いでいます。
国連憲章に違反するロシアの侵略、物価上昇と暮らしの困難、コロナ禍の不安…毎日のニュースを見ると気持が暗くなります。庶民の不安を解決する政治がますます必要となっていますが、政治だけでなく明日へ生きる希望が湧く読み物がほしいと思っていました。その気持ちに応えてくれる本です。
(柏木新・話芸史研究家)
不思議な世界へ導くレシピ本
『新装版 亡命ロシア料理』
ピョートル・ワイリ、アレクサンドル・ゲニス 著/沼野充義、北川和美、守屋愛 訳
1970年代、25万人ものユダヤ系ロシア人がイスラエルやアメリカに渡った。この本の著者ワイリ氏(ラトヴィア生まれの新聞記者)、ゲニス氏(ロシア生まれ、ラトヴィアに住むジャーナリスト)もヨーロッパを経由してアメリカへ。ニューヨークのロシア人街に居を構えた2人は料理好きでもあり、美食家でもあったのでしょう。コーラとハンバーガーから決別しようと、こう呼びかけます。
「私たち文学料理人としての義務は、途方にくれたわれら亡命ロシア人社会に、優れた料理に対するよき感覚を植え付けることです」と。そして、ロシア料理にはほとんど無知であろう「西側」に対してこう啖呵を切るのです。「ロシアが遅れた野蛮な国だと思われていることはわかり切っている。嫌われてもいるし怖がられてもいる。だからといってそれがロシア料理とどんな関係がある?文化大革命のせいで中華料理の評判が傷ついているだろうか?第三帝国が罪を犯したからってソーセージやバイエルンのビールと世界は縁切りしただろうか?」と。
また「国際主義の理想が我が祖国で実現したのは料理の分野だけだった」と言い切り、シベリア風水餃子、ボルシチ、羊肉の串焼きなどは北方および中央アジア、ウクライナ、カフカス料理であるが、今やロシア料理だと「西側」は思っているという。
「とても洒落たセンスと鋭い機知で読者を不思議で美味しい世界に誘ってくれる(訳者、沼野充義氏)」。そんな楽しい文章に浸っていると「みじん切りのタマネギ中4個に小麦粉スプーン一杯を加えて」とレシピに導く。そうです、紛れもなくこの本はロシア料理のレシピ本なのです。
昨年、毎日新聞でこの本が取り上げられ、『帰れ、鶏肉へ!』と題して鶏肉レシピが紹介され、ネットでも話題になりました。鶏肉、玉ネギ、バター、月桂樹の葉、粒胡椒を用意する。「水は一滴もいらない。塩をふり、弱火にかけてその場を離れる。掃除なり、愛なり、独学なりに精を出せばいい」と。プーチン帝国下のロシアの人々は今、どんな思いで料理をしているのだろうか。(なかしまのぶこ 元図書館員)












