読書 今月の本棚と話題*『時代歴史小説「栃尾郷の虹」』 玄間太郎 著〈2021年5月23日号〉

世を進めるのは底辺の人々

本の泉社 2021年
1650円+税
げんま・たろう 1944年新潟県生まれ。新聞記者42年。第九回新潟出版文化賞優秀賞受賞

 新潟県長岡市にあるとち地域に伝わる杤尾つむぎにまつわる歴史的出来事に創作をふくらませた時代歴史小説です。

 物語の主人公は、少女の頃から機織りの天才といわれ、百姓家に嫁ぎ、たゆまぬ努力と苦難の末、新しい杤尾紬(縞紬)を創始した大崎オヨと、諸国にその販路を広げるために尽力した庄屋植村角左衛門です。

 江戸時代の天明期(1781~88年)、自然災害と幕府の失政により、江戸四大飢饉の一つといわれる天明の大飢饉が起きました。全国で数万人が餓死したといわれます。

 庄屋の植村角左衛門は凶作・飢饉のなか稲作だけでは村は救えないと、織物の開発に着手していました。

 そうした時、角左衛門はオヨの織る縞紬の評判を聞き、オヨに会いに行きます。オヨの縞紬を見た角左衛門は、その出来栄えの素晴らしさに、言葉が見つからないほど感銘します。

 やがてその縞紬は、角左衛門の手によって杤尾の名産品として全国へと広がり、村を救ったのです。

 この二人は実在した人物ですが、その記録はわずかです。

 作者は当時の歴史的時代背景を踏まえながら、それを横糸に、二人とその二人を取巻く登場人物を縦糸に、物語を豊かに創作し、面白く素敵な織物(小説)に仕上げています。

 オヨの出生はよくわかっていませんが、作者がオヨを双子の姉妹とし、姉のサヨを角左衛門の養女としたことは、物語の面白さを増加させる効果を発揮しています。

 小説の中で、名もない百姓の女房が優れた開発を成し遂げたことに深い感銘を受けた角左衛門に、「世を進めるのは一握りの武士ではなく無名無数の民百姓ではないか。底辺に生きる人々の中にこそ凄い人々がいるのではないか」と言わせていますが、この言葉の中にこそ、作者のメッセージが込められています。

 今日、政権交代が必要となっていますが、底辺にいる私たちこそ、それを成し遂げる存在であると、大きく励ましてくれるお薦めの作品です。(柏木新・話芸史研究家)

 

東京民報2021年5月23日号より

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