読書 今月の本棚と話題*『一汁一菜でよいという提案』土井善晴 著〈2021年7月18日号〉

食の文化は身体そのもの

グラフイック社 2016年
1650円(税込み)
どい・よしはる 料理研究家。1957年大阪市生まれ。NHK「今日の料理」講師他、著書多数

 はじめに「この本はお料理を作るのが大変と感じる人に読んでほしい」とあります。今、お料理をしない、できないという理由はいくらでもあります。だからといって毎日外食では経済的にも栄養的にもバランスを崩します。安易なサプリメントは効果があるのでしょうか。日々の生活の忙しさの中で誰もが健康でありたいと願っています。少なくとも自分の身は自分で守りたい、そのための「一汁一菜でよいという提案」です。

 では「一汁一菜」とは?。ご飯―日本人の古来からの主食、味噌汁―伝統的な日本の発酵食品、漬物―野菜を保存するために塩をして発酵して美味しくなったもの。味噌汁を具だくさんにすれば栄養価もアップします。これならだれでもできます。また、毎日食べても飽きない、ということが重要だそうです。「凄く美味しいもの」は味も濃く人工的です。飽きない、ということは日本の風土で千年以上もかけて蓄積されてきたもの、食の文化であり、私たちの身体そのものなのです。

 「ひと手間がおいしい」と言いますが家庭料理は、下ごしらえはするが手をかけない、それが美味しさにつながるのです。

 また、日本には昔から「ハレ」と「ケ」という見方があります。ハレの祭りごとは神様への祈り、感謝を持って手間を惜しまず美味しく作ります。ケは日常です。でも今は多くの人がハレの価値観をケの食卓に持ち込み、お料理とはテレビで紹介されるようなものでなければと思い込み、毎日の献立に悩んでいるというのです。

 実践編として季節ごとのメニューが写真とともに紹介されています。後半は「和食文化論」として縄文時代に分け入り、日本料理のルーツを探り「人間は料理をすることで人間になった」(「火の賜物」より)という言葉を紹介します。料理は単に「腹を満たす」ことではなく、文明の道標なのだと思い知りました。

 どんなに忙しくても、まず一椀の味噌汁を、もし余裕があればもう一品を、そんな日々を増やしていければいいのかな、それはお父さんでも子どもでもできるのでは、と思いました。(元図書館員・なかしまのぶこ)

東京民報2021年7月18日号より

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