街角の小さな旅25 ヒューマニズムを生涯のテーマに 長谷川町子記念館・美術館とその界隈(2022年9月4日号)

磯野家銅像(桜新町駅前)

 長谷川町子記念館・美術館は、東急田園都市線桜新町駅の近くにあります。

 その桜新町(世田谷区)は、中世、徳川家康が江戸に幕府を構えた江戸初期に開拓され、その後、20世紀初頭に「都心の軽井沢」と銘打った、関東で初めての高級別荘地として開発されたところです。桜新町の名前の由来は、この時に植えられた桜に由来しています。

 桜新町駅前で「サザエさん」に登場する磯野家一家のブロンズ像のお迎えを受け、サザエさん通りに歩みをすすめます。

 記念館と美術館は折り鶴に想を得たとされ、鋭角なフォルムで造られており、閑静な住宅街に溶けこんだ手焼きレンガの外壁の建物が印象的です。

 手前にあるのが美術館です。美術館は町子、毬子姉妹が蒐集した800点近い絵画や陶磁器、ガラス装飾品などを展示。11月27日まで「生活の中にある身近な命の息づかいや美しさを描いた作品」をテーマにした「収蔵コレクション展『机上の世界』」が開催されています。

長谷川町子記念館

 美術館の向かいに記念館があります。記念館は「長谷川町子の足跡とその時代背景を紹介する記念館をつくりたい」という願いを実現したもので、1階の常設展示室ではヒューマニズムを生涯のテーマにした町子の代表作「サザエさん」、「エプロンおばさん」、「いじわるばあさん」の世界観を紹介。2階常設展示室では、町子の生涯を語るさまざまな資料が展示されています。

 「サザエさん」の4コマのフレームの向こうには、戦後の平和でのどか、温(あたた)かな庶民の暮らしがありました。

「食と農」の博物館

 桜新町商店街にもどり馬事公苑通りを北上、1964年の東京オリンピックで馬術会場となった馬事公苑(現在、リニューアル工事で閉園中)の正門前、背の高いケヤキ並木の途中に「『食と農』の博物館」があり、巨大な鶏のモニュメントが迎えてくれます。

「食と農」の博物館

 博物館は東京農業大学が食と農の「今まで」、「今」、「これから」を発信することを目的に開設したもので、大学の歴史資料、鶏の剥製コレクション、全国の日本酒の蔵元の8割を占めるという卒業生の蔵元紹介コーナー、古民家のジオラマ、古農具などが常設展示されており、9月21日まで創設者の榎本武揚、東京農業大学の初代学長で足尾鉱山鉱毒事件で農民を支援、告発をおこなった横井時敬、日本の博物館の父と呼ばれる田中芳男の功績を紹介する企画展「学祖群像」が開催されています。

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