三鷹市が構想策定をすすめる国立天文台周辺のまちづくり(大沢地域一帯と野崎4丁目)に伴い、小学校を移転・統合し、「義務教育学校」の制度を利用した新たな小・中一貫教育校の整備を計画している問題をめぐり、新日本婦人の会三鷹支部は10日、大沢コミュニティ・センター(同市大沢4)で学校統廃合を考える学習会を開きました。
和光大学の山本由美教授、品川区の現役教員、日本共産党の前田まい三鷹市議が登壇。それぞれの立場から問題点を述べました。
市は、第七中に隣接する国立天文台の北側ゾーン約4.78ヘクタール内に、野川の浸水予想区域に立地する羽沢小を、すでに高台に建つ大沢台小とともに移転予定。羽沢小の跡地には、スーパーマーケットの建設を検討しています。

教育権の侵害
山本氏は、市の計画は実質的な学校統廃合にも関わらず、小学校を「移転」するとだけ市民に説明していることを問題視し、「教育論をかなぐり捨てたような学校統廃合」と批判。「学校統廃合は子どもの教育権に関わる最重要事項」であり、複雑な手続きを踏み、保護者や地域説明会で合意形成を経て、時間をかけてつくり上げなければならないと指摘。「校風や文化、コミュニティーが異なる学校の急な統廃合は、学校の特色を一瞬で失うリスクがあり、子どもたちへの負担が大きい」と危ぶみました。
同時に市は、学校施設を学校教育の場(第1部)、放課後の場(第2部)、夜間における生涯学習など多様な活動の場(第3部)として機能転換する、「学校3部制」の導入も検討しています。山本氏は学校3部制について、「内閣府のPPP/PFI推進室(民間資金等活用事業推進室)が学校統廃合のイメージとして2023年に打ち出しているスタイル。三鷹市は、この民営化の先取り」だと説明しました。
市が小学校を含む施設全体を、「おおさわコモンズ(共有地)」と位置づける方針も批判。山本氏は「杉並区の岸本聡子区長は、大規模再開発に反対する概念として、公共や環境を守るために”コモンズ″という言葉を用いている。壊すために使うのは絶対におかしい」と憤りました。
2023年5月時点で、羽沢小、大沢台小ともに、400人弱の児童生徒が通学しており、山本氏は「まったく統廃合が必要な規模ではない」と断言。そもそも市が、統廃合を決める「適正規模」自体を公表していないことも、問題として挙げました。
現場の疲弊明らか
品川区の教員は、小・中一貫校の課題として、小学5・6年生で培われる自治の力が付きにくいこと、小中学校の校種が別々であることから生じる指導観の違い、教員間の意思疎通の難しさなどを解説。区が1999年に策定した「教育改革プラン21」により、中身のない施策がトップダウンで次々に降ろされ、現場の教員が疲弊している実態を語りました。
前田市議は、まちづくり計画の発端となった天文台の財政難について説明。天文台は日本の天文学研究の中核を担う機関ですが、国からの基礎研究予算が毎年約1億円削減されており、天文台が研究費の財源確保のため、市に相談したことから計画が進んでいます。
前田市議は、市役所内に「三鷹市国立天文台周辺地区まちづくり推進本部」が設置され、本部長に市教育長の貝ノ瀬滋氏、副本部長のひとりに都市再生機構(UR)出身の久野暢彦副市長を据えた人事に言及。「学校統廃合と公共施設の複合化の狙いが透けて見える」と指摘しました。
統廃合が狙われている小中学校は、「他の地域に比べると少人数学級が実現できている。このメリットを生かしてほしい」と主張。野川の治水対策強化の必要性や、市が計画の財政基盤を明らかにしていない点にも切り込みました。
東京民報2024年2月25日号より