「大きな抑止力」に  SES詐欺 高裁判決で賠償額増額〈2025年2月16日号〉

 「未経験でも月給30万円確約!」などと求人広告でうたい、募集した未経験のシステムエンジニア(SE)に経歴詐称などを強要していたシステムエンジニアリングサービス(SES)企業の代表者2人に対し、元社員3人が精神的苦痛を受けたなどとして損害賠償を求めた訴訟で、東京高裁(三角比呂裁判長)は6日、代表者らに総額約769万円の支払いを命じる判決を言い渡しました。

会見する弁護団ら=2025年2月6日、千代田区

 SESとは、取引先の現場などに従業員のSEを派遣・常駐させ、技術力を提供して対価を得る仕組み。人手不足が深刻化しているIT業界において、昨今増加している業態です。

 原告の元社員3人は20~30代の若者で、2021年に被告の代表者らが運営する会社の求人に応募。被告らは「この業界では経歴を偽るのが当たり前」と面接で教え、入社させました。

 内定後にプログラミングスクール受講費用として、一人は48万円、もう一人は60万円を支払いました。しかし、スクールの実態はエンジニアとしてのスキルを習得できるものではなく、経歴や年齢を偽ったスキルシート(職務経歴書の一種)の作成や、面談の受け答え練習など、詐欺に加担させるもの。業務先では給与や残業代未払いのほか、社会保険料の違法な天引きを行い、納付義務も果たしていませんでした。

 被告らは複数のSES企業を立ち上げ、同様の手口を繰り返しています。

「闇バイト」と類似

 原告3人は業務を開始したものの、取引先が求めるスキルを有していないことから現場の上司から叱責され、精神的な限界を迎えて短期間で退職。労働組合の首都圏青年ユニオンに相談し、東京地裁に22年12月、提訴しました。

 2024年7月に出された一審判決(一場康宏裁判長)は、原告らの主張をおおよそ認め、被告らに総額約516万円の支払いを命じました。被告らはこれを不服として控訴し、原告らも控訴。2審は代表者らの主張を全面的に棄却し、元社員らが転職活動を余儀なくされた期間などを踏まえて「逸失利益」が認められ、賠償額の増額を命じる判決となりました。

 記者会見で、首都圏青年ユニオン顧問弁護団の伊久間勇星弁護士が判決内容を説明。「SES詐欺グループによる経歴詐称の派遣詐欺行為に対し、大きな抑止力になった。求人広告に悪質なSES企業が安易に掲載されてしまう状況を改善するために、きちんと企業審査をしていただくよう、各求人サイトに申し入れを行いたい」と語りました。

 首都圏青年ユニオンの尾林哲矢事務局長は、被害者の多くが経済的に困窮しており、詐欺であると気づいた場合でも、貯蓄がなくなり辞められなくなっている実態など、「闇バイト」との類似性を指摘。「IT化、DX(デジタル変革)化がさまざまな分野で進められる一方で、日本社会の中枢的な部門の開発に、経歴詐称SEが入り込んでしまっている」として、「行政機関による管理・監督が重要」だと主張しました。

 原告の一人は、「今もまだ被害者の相談が続々とユニオンに来ている。一刻もはやく詐欺企業をなくしたい」と、SES詐欺撲滅に向けた協力を呼びかけました。

東京民報2025年2月16日号より

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