【守れ地域の足 公共交通クライシス】せたがやくるりん 便数半減に住民が署名 区がバス事業者の支援へ〈2025年12月21日号〉

 世田谷区の祖師谷地域で長年、地域の住民に利用され、親しまれてきた地域循環バス「せたがやくるりん」が、今年4月から突然、大幅に減便されました。地域の足がなくなり、困った利用者と住民が、署名を集めて区に提出。区は、区内各地を走るバス事業者への支援の検討を表明しました。

 せたがやくるりんは、「祖師谷・成城地域循環路線」の愛称です。小田急線の成城学園駅前にある区の砧総合支所と、隣駅である祖師ヶ谷大蔵駅、祖師谷商店街をつなぎ、約1キロメートル四方の地域を循環します。

様々な年代の利用者に親しまれる、せたがやくるりん=祖師ヶ谷大蔵駅前、世田谷区

 そのバスが4月、突然、大幅に減便されました。平日の便数は32から18にほぼ半減。高齢者が病院に通う時間帯の10時~12時、買い物に行く人も利用する午後3時~5時の便がなくなり、朝の便も6時台がなくなり、終便も午後9時だったのが7時半になり、塾通いの子どもなどが使えなくなりました。

 同地域に暮らす道家(どうけ)暢子(ようこ)さんは5月に、減便を元に戻すよう区が事業者に求めることを要望する署名を個人の名前でつくり、地域に配りました。「利用者だけでなく、商店や病院などからも、来客や予約が減ってしまったという話が聞こえてきた。みんなが困っている。何かせねばという思いでした」(道家さん)。

住民がつくった路線

 せたがやくるりんが、本格運行を始めたのは2005年です。

 同地域での街づくりの運動に長年、関わってきた根岸佐雄さんは、「小田急線の高架化が決まって、住民による街づくりの会が立ち上がったことがきっかけだった」と振り返ります。

 再開発で、道幅が狭い祖師谷商店街の道路を広げる案も検討されましたが、「道幅が広がると、商店が続けられなくなる」という声も出されました。話し合いの結果、道幅を広げない代わりに、商店は道路に商品を並べないようにして、そこにバス路線を走らせて住民の足とすることが決まったといいます。

 根岸さんは「区のトップダウンによる計画ではなく、住民や地域の商店の要求を出し合って、提案をまとめたことに、大きな意義があった」と振り返ります。

 道家さんも、「住民と区の職員が地域を歩いて、どこを走るか、バス停はどこに置くかと一つひとつ決めていった。住民がつくった路線です」と話します。

 道家さんがつくった署名は、大きな反響を呼び、6月末には544人分となり、7月半ばには800人分を超えました。

 7月16日には、区長室長と面会し、816人分の署名を提出しました。区側からも、「せたがやくるりんは、住民との協働でつくった路線」「区として何ができるか、検討したい」と前向きな回答があったといいます。

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