連載が映す庶民の戦後史 漫画サザエさん誕生80年 長谷川町子美術館・記念館〈2025年12月28日,1月4日合併号〉

 そそっかしく元気なサザエさんと、磯野家、フグ田家の面々―アニメもあわせて、国民的な人気を博す長谷川町子の漫画「サザエさん」は1946年に最初の新聞連載が始まり、2026年は連載開始80年の節目を迎えます。休止を挟みながら28年間続いた漫画連載は、豊かなユーモアと社会風刺を交えてその時々の庶民の日常を描き、戦後史の貴重な資料にもなっています。世田谷区の桜新町にある長谷川町子美術館と同記念館を訪ねました。

記念館の入り口には、サザエさん(右)、いじわるばあさん(左)と話す長谷川町子(中央)の銅像が=世田谷区 ©長谷川町子美術館

 「サザエさん」の最初の連載は、福岡県の地方紙だった「夕刊フクニチ」で1946年4月22日から始まりました。

 町子は、漫画「のらくろ」などで知られる田河水泡に弟子入りし、1935年には15歳で漫画家デビューしました。しかし、第二次世界大戦の戦況が悪くなるにつれ、漫画の仕事は減っていきます。一家は福岡に疎開し、町子は徴用を避けるために、西日本新聞社に入社し、報道写真の修整などをしていました。

 戦争が終わると退社し、翌年に創刊した夕刊フクニチが、漫画連載を依頼しました。当時の家の近くに、海岸線が広がっていて、妹と海岸で漫画の構想を考えるなかで、サザエ、フネ、波平、カツオ、ワカメなど、海産物や海にちなんだ名前を登場人物に付けました。

折り紙がモチーフ

 美術館は、町子自身が、長年住んだ自宅の隣に1985年に開設しました。

 もともと絵が好きだった町子が、サザエさんなど作品がヒットして生活に余裕ができたなかで集めた絵などの美術品を、多くの人に見てもらいたいと開設したのが、美術館です。付き合いのあった築地の料亭の大旦那から、自宅に飾っていた絵を見て「良い絵があってもお内で眺めやすだけ」「うちは大勢のお客さんが見てくれはります」と言われたことも、きっかけでした。こうした美術館設置の経緯は、町子が「私と美術館」という漫画に描き、館のリーフレットとホームページに掲載しています。

 折り紙をモチーフにした建物や、でこぼこのレンガなど、館の設計にも町子のこだわりが詰まっています。同館学芸員の相澤弘子さんは、「順路は設けず、自由に好きな角度から、作品を見てほしいという考えでつくられています。光が入るスリットがある屋根も、美術館には珍しく、天候や季節によって、美術品にも、さまざまな表情が生まれます」と話します。

 年3回、展示替えが行われていて、現在の展示は「春になれば」(3月22日まで)。桜を描いた収蔵作品を多く展示しています。町子自身も桜が好きで、特に枝垂(しだ)れ桜は自宅の庭にも植えていたといいます。

町子が好きだった桜の絵が展示されている美術館

原画をモニターで

 美術館と道路を挟んで向かいの記念館は2020年、町子の生誕100年に開設しました。

 美術館の来場者からは、町子の漫画の原画を見たいという要望が多くあったといいます。それまでは美術館の一角に、町子の作品コーナーを設けてきましたが、町子作品専門の分館として開設したものです。

 1階常設展は「町子の作品」で、三大作品とされる「サザエさん」「いじわるばあさん」「エプロンおばさん」の登場人物たちが迎えてくれます。

記念館1階の常設展では、町子作品のキャラクターが迎えてくれる(©長谷川町子美術館)

 昭和20~30年代の「サザエさん」に描かれた家具などを配置した茶の間や、サザエの弟カツオのように板塀への落書きを体験できるコーナー、町子がつくった絵本や塗り絵の展示、町子作品の原画がモニターで見られるデーターベースなどがあります。

 アシスタントがいなかった町子は、新聞連載の原画を切り貼りして、自分で必要な背景を描き足して単行本に収録する原画をつくりました。こうした修正の過程も原画から読み取れます。

 2階の常設展は「町子の生涯」で、さまざまな地方紙を経て朝日新聞にいたるサザエさんの連載の変遷や、姉妹3人で創設し町子作品の出版を担った姉妹社の活動などを、貴重な資料とともにたどっています。

芋の登場を一気に

 記念館も美術館の展示替えに合わせて、年3回の企画展で、さまざまなテーマで町子作品の魅力を掘り下げています。現在の展示は「町子が描いた食べもの」です。

 最初に目を引くのが、サザエさんに「芋」が登場する作品の原画を集めた展示です。サザエさんの単行本68巻をすべて調べ、芋が登場した作品をリスト化、46本の原画を紹介しています。

 サザエは、新聞連載一回目にも、ふかし芋を口にしながら登場します。町子自身も、焼き芋の屋台が来ると、自ら買いに行くほど、芋が好きだったといいます。

企画展では町子が好きだった食べ物のパネルも

 また、「柿」「おにぎり」「おやつ」など12のテーマに分けて、登場する作品や、描かれ方を解説するコーナーもあります。担当学芸員の長澤有記さんは、「コメの値上がりを嘆くサザエのように、現代につながるような作品もあります。50年以上に及ぶ作家生活のなかで描かれた多くの『食べもの』を通じて、日本の食生活の変化など、さまざまなことが見えてきます」と紹介します。

東京民報2025年12月28日,1月4日合併号より

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