コラム砂時計 12月8日に思うこと〈2021年12月12日号より〉

 12月8日は太平洋戦争開戦の日に当たる。2年前、91歳で亡くなった田辺聖子さんの著書「道頓堀の雨に別れて以来なり─川柳作家・岸本水府とその時代」が戦争当時の大阪の世相を数々の川柳とともに紹介している。

 「帝国陸海軍は本八日未明、西太平洋において米英軍と戦闘状態に入れり」と大本営陸海軍部が発表したころ、田辺さんは13歳。女学校の2年生で、文学に親しむ「純粋培養の軍国少女」だった。
 後に当時の大阪について詳しく調べた田辺さんは「庶民たちは、『海ゆかば』や『軍艦マーチ』にまどわされたりせず……〈どないせえ、っちゅうねん。まだこの上に戦争せえ、てか。阿呆違うか、軍人は!〉と巻き舌で言い罵(つの)っていたのだ」と書いている。だが、庶民の怒りが為政者に届くことはなかった。
 1945年3月13日、大阪はB29爆撃機による最初の空襲に見舞われ、それは、広島・長崎への原爆投下の後、終戦前日まで計9回に及び、市街地は焼け野原と化した。
 大空襲時、下校中だった田辺さん(当時18歳)が、火の粉が舞う中、長時間かけてたどり着いたわが家も、跡形なく焼け落ちていた。
 もとより犠牲はすべての国民に及び、そこから得た教訓が「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすること」(憲法前文)だった。
 ところが、先の総選挙の結果、大阪を拠点とする日本維新の会が大幅に議席を増やし改憲勢力が衆院の議席の3分の2を占めた。彼らが攻略しようとしている「本丸」は戦争の放棄をうたった第九条である。
 「田辺さん、この世相をどない思うてますか」と、ぜひ聞いてみたいものだ。

(阿部芳郎・ジャーナリスト)

(東京民報2021年12月12日号より)

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