【書評】暴力根絶など発展願う直言 『「切り札」山下泰裕は日本柔道界を変革できるか』 木村秀和 著〈1月23日号より〉

 30年余、柔道記者として第一線で活動してきた著者の日本柔道界の変革を願っての直言集です。

 「遠ざけられている山口香」など著名な柔道家の話も豊富で飽きさせない文章はさすがです。

 日本の柔道人口は年々減少し、ついに10万人台を割ろうとしています。

本の泉社 2021年
1300円(税込)
きむら・ひでかず 1942年生まれ。1991年から2019年まで主に月刊誌『近代柔道』を舞台に柔道界を取材

 その主要な要因は柔道界の体質にあり、柔道界には、暴力・体罰、男女差別など根本的解決が求められる問題点が横たわっています。

 特に暴力根絶は、柔道界にとって喫緊の課題です。しかし、著者は柔道界が「暴力根絶宣言」を表明するものの、「指導」の言葉の陰に隠れた暴力容認とペナルティーの軽さなど、実態は相反していることを具体的事実で明らかにしています。

 著者はその要因の一つは、山下泰裕全日本柔道連盟(全柔連)会長自身にあると指摘しています。

 山下会長は柔道界変革の「切り札」と言われています。山下泰裕はモスクワ五輪ボイコットの時、アメリカの圧力に屈した日本政府に対して、「日本は自らの意思によって態度を決めるのが本来の在り方」と悔しさと憤りの気持ちを表明していました。

 著者は「彼の若いときに感じた清新の気は今は感じたくても感じ取れなくなっている」と指摘します。

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