【コラム砂時計】鉄道開業150年に思うこと〈11月13日号より〉

 

 経済評論家の内橋克人氏が1981年に執筆された論考「赤字路線廃止は国鉄を救わない」に興味深い記述がある。北海道北上山地の麓にある滝上(たきのうえ)村(現在は町)がローカル線を引くにあたり、明治時代末期から、村をあげて政府に陳情運動を繰り広げた。

 その「決め手」となったのが村人全員を政権党の党員として登録するという作戦だった。その結果、渚滑(しょこつ)─滝ノ上間34・3㌔、12駅を結ぶ路線が開通した。第一号列車が走ったのが1923年11月5日だからちょうど99年前の今頃だ。

 当時は原敬内閣(立憲政友会)で、このことは、「滝上町史」にも「苦肉の策」として記録に残されている。その鉄路も60年余を経た1985年4月1日に廃線となり、遺跡だけが当時の記録をとどめている。

 今年は鉄道開業150年とあって、各種の催しが行われている。本紙10月23日号で紹介された港区立郷土歴史館の特別展もその一つである。そんな記念すべき年に「地域の将来と利用者の視点に立ったローカル線の在り方」という提言が出された。

 「提言」は国交省の有識者検討会がまとめたもので、「廃止ありき」でも「存続ありき」でもない、としつつ、旅客の1日あたりの利用者数が1000人未満、かつピーク時の1時間あたりの輸送人員が500人未満を目安として存廃を検討課題とするとしている。

 1987年の国鉄分割民営化の際、政府はこれ以上のローカル線廃止は認めない、と表明していた。ところが、この約束を反故にし、減便や駅の無人化を進め、利用者離れ→地方の過疎化という悪循環に陥っている。ちなみに、冒頭で紹介した滝上町も廃線前に約5600人あった人口は今、2300人まで減っている。

 自然を破壊してまでリニア中央新幹線を走らせることより、国は地域住民の足である地方鉄道の維持に責任を持つべきではと、鉄道開業150年に思う。(阿部芳郎・ジャーナリスト)

(東京民報2022年11月13日号より)

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