関東大震災97年でシンポ 声をあげ現状を変えよう 複合災害への備えは〈9月20日号より〉
- 2020/9/17
- 防災
相次ぐ地震や風水害に加えてコロナ禍が広がる中で、これまでにない複合災害への備えを考えるシンポジウムが12日に文京区内で開かれました。関東大震災から97年を迎えるのを記念したもの。異常気象の実態や、避難所のあり方など、各分野から報告されました。
三密となる避難所 コロナ禍での運営は
主催は、東京災害対策連絡会と、革新都政をつくる会。開会あいさつで、革新都政をつくる会の中山伸事務局長は、「今年も災害が相次いでおり、さらにコロナの新規陽性者が東京でも増え続けている。未体験の災害にどう取り組んでいくのか、多くの知見を集めていきたい」と呼びかけました。
東京災対連世話人の末延渥史氏は複合災害の現状について、①日本列島が地震の再活動期を迎えた②地球温暖化の進行で風水害が巨大化、激甚化している③グローバル化によって数年に一度、感染症の世界的大流行が起きている―と、複合災害が起きやすくなっている背景を紹介。自助の強調ではなく、予防原則に立った防災対策こそ大切だと強調しました。
コロナ禍のもとでの避難所のあり方について、日本共産党国民運動委員会の高瀬康正さんが発言しました。
高瀬氏は、体育館で雑魚寝など、典型的な「三密」となる日本の避難所に対して、イタリアの避難所では個室が提供されることを写真で紹介。コロナ感染拡大を防止しながら避難所を運営するため、国が地方自治体にさまざまな通知を出しているものの、自治体がどう対応したかの調査が不十分で、「国が最後まで責任を持つ姿勢がない」と指摘しました。
そのうえで、避難所・避難生活学会が「避難所TKB」として、①T=トイレを衛生的なものにすること②K=キッチンの改善③B=ダンボールベッドなど簡易ベッドの導入―を提言していることを紹介。「安心して避難できる避難所にするため、声を上げ、現状を変えていこう」と呼びかけました。
温暖化進み異常気象が
気象学者の増田善信さんが、異常気象の現状について、講演しました。
増田氏は、異常気象には、第1種と呼ばれる竜巻や集中豪雨といった狭い範囲で短期間に現れるものと、第2種と呼ばれる熱波や干ばつ、長雨など10日以上も続く極端な現象の2種類があると紹介。2種ともに、温暖化の進展のなかで、発生が増加していることを、温暖化と異常気象の関係に関する自身の仮説も含めて解説しました。
増田氏はそのうえで、二酸化炭素の排出量の推移からすれば、地球の平均気温が1・5度上昇することが予想される排出量にいたるまで、わずか8年しかないと指摘。1987年のモントリオール議定書でフロン類の排出規制に合意したことで、オゾン層の破壊が止められた経験もあることを強調しました。そして、国際的な取り組みで温暖化をとめるために、「ルールある社会」「公正な社会」という持続可能性の実現へ、全世界の市民社会が一致して声をあげることが必要だと提起しました。
東京災対連の伊藤潤一さんが閉会あいさつし、自治体との交渉など、各地での取り組みを呼びかけました。
(東京民報2020年9月20日号より)