「子どもに障がいがあったら働けない?」をテーマにしたシンポジウムが18日、オンラインで開催されました。主催は、障害児を育てる親などが集まる実行委員会。障害のある子どもを保育園や幼稚園に入所させる際に直面する厳しい現実、国や自治体の不十分な支援について、当事者らが声を寄せ合いました。
心臓疾患がある子どもの父親が司会を務め、3歳になるダウン症候群と自閉スペクトラム症の双子を育てる母親、あんなか氏が主催あいさつ。板橋区在住時、認可保育園で障害のある子の枠がなかったことや、療育が必要だが、1人を療育に通わせる日にしかもう1人を保育園に預けられないなど、就労以外の目的では利用しにくい保育園の制度に言及。「正直、しんどい」と吐露しつつ、当事者が抱える見通しの立たない不安な気持ちが少しでも前向きになるよう、「大丈夫だよ」と声を掛け合える社会を目指したいと語りました。
事例紹介として、2人の母親の経験をあんなか氏が代読。ダウン症の子どもがいる板橋区の母親は、ようやくプレ幼稚園に通えたが面接で落選。選考まで常に子どもが園から監視されているような状況が一番のストレスだったと想起し、「そもそも十分に枠があれば、親子で無理なプレッシャーを感じずにすむ」と話します。
豊島区在住の母親は、子どもが0歳から区立の保育園に通所したが、成長するにつれ発育の遅れや知的障害が見られるようになり、2歳半で診断名がつくと退園を促されました。退園を決意した母親は就労時間が短くなり、睡眠時間を削って深夜に在宅勤務をこなしていますが、収入が半減しています。
ケアの視点で
発達心理学者でNPOあいち障害者センターの近藤直子理事長が、基調講演。保育園が足りず待機児童が増える中、3歳未満児の枠が拡大できていない現実や、医療的ケア児の受け入れが難しい実態を指摘。本来なら入園前にさまざまな支援や必要な情報が親に届き、1人で育児を頑張らなくてよい仕組みづくりが必要であると、自治体の役割に言及しました。

親にとって保育園や幼稚園は預ける場所ですが、子どもには楽しく通える場所か否かが大切であり、子どもたちが自分で園を選べる社会でないことも問題と強調。保護者には何よりも情報共有できる保護者仲間が必要であり、「日本国憲法13条で幸福追求権がうたわれている通り、親も子どもも幸せに過ごしてほしい」と訴えました。
ゲストコメンテーターとして、同志社大学の岡野八代教授がフェミニズム研究者の視点から発言。社会的な状況から女性が育児や家事の責任を長年にわたり負わされてきたことで、女性は経済的な面だけでなく、政治的な発言力も弱くなっていると危惧します。

社会に重要かつ重労働のケアを一部の人だけが担い、ケアの価値が低く評価されている実態に、「政治の中枢にいる人たちがケアの大切さ、大変さを理解できないから」と推察。誰もがかつては子どもで、誰かに育てられてきたが、今は自助が求められる自己責任の時代であり、「子育てが社会の一部の人だけの問題になっている仕組みを、改めて問い直さなければいけない」と述べました。
参加者から、「娘に聴覚障害が発覚したが、通所中の保育園は育成対応していない。転園すべきか」「国は未来ある子どもを育てるため、お金も人材もかけて向き合うべき」など、多数の悩みや意見が寄せられました。
(東京民報2021年4月25日号より)