新型コロナの感染拡大で医療ひっ迫に直面する中、今夏の東京五輪・パラリンピックの中止を求める声が急速に広がっています。
「医療は限界 五輪やめて!」「もうカンベン オリンピックむり」。病院の2・3階の窓に、こう張り出された写真が、最寄りの病院の叫び」として紹介したツイッター(短文投稿サイト)に共感を示す「いいね」は20万回超(10日現在)、記事を共有するリツイートは6万回(同)を超えています。

写真の病院は立川相互病院(立川市、民医連加盟)で、張り紙は4月30日から掲示。同病院は昨年4月から新型コロナ患者を受け入れ、テレビのニュース番組などでも、たびたび紹介されています。今年4月までに242人の患者を受け入れました。5つある一般病棟(各47床)のうち一つを改修し、ICU(集中治療棟)、HCU(準集中治療棟)のうち3床を新型コロナ重症者用に使っています。
医療現場の声が届いて
高橋雅哉院長はメッセージを張り出した思いについて、文書で取材に応じました。病院の窮状に加え、オリンピックの開催でコロナ感染拡大が懸念される中、さらに突然の五輪への看護師や医師の派遣要請などを報道で知り、「病院としてメッセージを表明する必要を感じた」と言います。さらに、選手や関係者の努力を考えると非常に苦しいが、「現実的に感染拡大の可能性のあるオリンピックの開催には反対せざるを得ません」と、胸の内を吐露しています。
写真を投稿した「なと」さんは、「この医療従事者たちの声が少しでも届きますように」との願いも添えています。この投稿には「医療は本当にひっ迫してます。正直オリンピックどころじゃないです」など、共感を示す多くの返信も寄せられています。
「五輪中止を」ネット署名5日間で30万人超す
弁護士の宇都宮健児氏が5日正午からオンライン署名サイト「change.org」上で呼びかけた五輪大会中止をIOC(国際オリンピック委員会)とIPC(国際パラリンピック委員会)、国、都、組織委員会に求める署名には、10日午後3時までに31万6000人を超える賛同が寄せられています。
宇都宮氏は「新型コロナにより、多くの人々が生命を脅かされ、経済的にも困窮を強いられている中、五輪中止判断の遅れによって国民の負担はさらに増している」と指摘。「今夏開催中止を即刻決断し、五輪中止によって利用可能になった各資源を、新型コロナウィルスの感染拡大を防ぎ、人々の命と暮らしを守るために向けることを強く求めます」と訴えています。署名は英語版も作成され、海外メディアにも注目されています。
世論調査6割が中止
読売新聞が7~9日に実施した全国世論調査では、今夏の東京五輪について「中止する」59%で最も多く、「開催する」は39%。緊急事態宣言の対象となる6都府県に限ると「中止する」の平均が64%でした。
また共同通信が4月に行った世論調査では、「中止する」は39・7%で最多、「再延期する」25・7%とあわせると65%が今夏開催に反対でした。一方、「開催する」は28・9%でした。
【東京民報2021年5月16日号より】